| Data.4-14 |
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「真帆、副長はどうした?」 「多分、艦長室だったと思うけど…」 「艦長室? 何で?」 「さぁ…? 艦長とこれからの事について 打ち合わせとか有るんじゃないかしら」 「ふ〜ん…」 「上条さん。艦長代理に何か用事でも?」 【艦長代理】 その単語を聞く度に、意味も無く苛々してくる。 だからと言って真帆に八つ当たりする事も出来ず 上条は苦虫を潰した様な表情を浮かべるのみだった。 所用が出来た。 だから俺はあの時、艦長室を訪れたんだ。 今迄も何度か訪れた事の有る場所。 用事が無ければ訪れる事も無い、特別な場所。 俺は…あの人の様に成りたいと思っている。 そして、古代女史の言葉を信じて此処迄やってきた。 あの人に少しでも近付きたい。 そう信じ、そう願って…。 「ん?」 扉をノックしようとしたら 部屋の奥から何やら声が聞こえてきた。 「誰か来ているのか?」 艦長室を訪問する人間は限られている。 一体誰なんだろう? そっと扉に近付き、耳を近付けてみる。 笑い声が聞こえてくる。 一つは艦長の声。 もう一つは…。 体を少し動かせる様になってきたので 古代は上体を起こし、ベッドに座って ゆっくりとした時間を過ごしていた。 但し『度を越えてはならない』と云う 美晴の指示も有り、美雪が監視に就く事になった。 他の者では【艦長・古代 進】に遠慮して 注意が出せないから、と云うのが表向きの理由。 実際は『少しでも親子共有の時間を』と云う 美晴の心遣いからである。 「でね、リゲルちゃんは凄いんだよ。 あの木の天辺に登ってね、機械も使わずに 大きな木の実を取っちゃったの」 「へぇ〜。木登りが得意なんだな」 「そうみたい。ヤマトに来てから覚えたんだって」 「じゃあつい最近じゃないか」 「そうなの。私も出来るかな〜?」 「出来ない事は無いと思うが…」 「思うが、何?」 「年頃の娘がなぁ〜。木登りを始めるのは一寸…」 「何よ〜、お父さんったら!」 このヤマト内では聞き慣れない 言葉の遣り取りだった。 それはそうだろう。 彼等のは【親子の会話】である。 父と娘の、何気ない会話。 古代には娘が居る。 当たり前の事の筈が、上条に強い衝撃を与えた。 『貴方は本当に、古代の若い頃に良く似ている。 きっと…彼の様に、いいえ…彼以上に 成長してくれると思っています』 あの時の古代 雪の言葉が何度も頭を過ぎる。 そう、信じていた。 自分と古代は同じだと。 だからこそ、自分が一番古代を理解出来ると。 同じ【悲しみ】を抱いていると。 だが…現実はどうだろう? 古代は自身の後釜とも言える【艦長代理】の任を 自分ではなく島 次郎に委ねた。 身寄りの無い自分とは違い、彼には娘が居る。 そう、家族が存在しているのだ。 『違うじゃないか…』 上条はわざわざと震えながら 拳を硬く握り締めていた。 |