Data.4-16

「お父さんに謝って!」

古代は一瞬耳を疑った。
反論出来ず項垂れるのみの自分に代わり
美雪が声を上げてくれたのだ。

「上条さん、お父さんに…
 古代艦長に謝って下さい!
 艦長はそんな個人的な理由で
 大切な任務を誰かに託す人じゃありません!
 上条さんはずっと艦長と一緒に
 このヤマトに乗って戦ったんでしょう?
 だったら、解ってる筈でしょ?
 艦長がどんな人かって事位!」
「解ってたさ…。
 だが、それはとんだ期待外れだっただけだ」
「艦長はそんな人じゃないっ!!」
「戦闘経験の無いお前に何が解るっ?!」

上条の怒りの矛先は古代から美雪へ。
美雪は相手が戦闘班長だと云うのに
怯む事無く睨み返している。
この辺りの気の強さは両親に似てしまったのだろう。

「戦場に出たから戦争を知ってるとでも言うの?
 戦場に出なければ戦争を知らないって言いたいの?
 違うでしょ?
 皆、戦争の悲惨さは知ってる。体験してる。
 辛いのも苦しいのも、貴方一人だけじゃない」

まるで雪自身に言われている様な錯覚。
心苦しい。辛い。
自身の思いを断ち切るかの様に上条は唸り、
その両手で美雪の両肩を掴むと
激しく前後に揺すり出した。

「何故…? どうしてなんだ…っ?!」
「上条さん…?」
「どうしてなんだよっ?!!」

* * * * * *

次郎が艦長室を訪れたのは丁度その時だった。
殺気溢れる勢いで美雪の肩を掴む上条の姿。
尋常ではない空気。

どう云う力がその時働いたのかは判らない。
だが、美雪の体は不意に上条から離れ
近くの壁に背を激しくぶつけて転倒した。
次郎が艦長室に飛び込んで来るには
充分過ぎる理由が有った。

「上条! 貴様っ!!」
「?!」

気が付いた時には上条の左頬に
次郎の右拳がめり込んでいた。
部屋に飛び込んだ勢いを殺す事無く
拳に乗せて殴っているのである。
不意打ちを食らった上条は
防御する事も出来ず、やはり壁に吹っ飛ばされた。

「な、何するんだ 島っ?!」
「貴様、美雪ちゃんに何をしたっ?!」
「え?」
「彼女に危害を加える者は
 誰であろうと俺が許さんっ!!」

次郎の声が部屋に響き渡る。
只 様子を見ている事しか出来なかった古代は
この次郎の声に目覚めさせられたかの様だった。

嘗て愛する女を守る為に、彼女の為だけに
対格差の有る相手に挑んでいったあの男の姿が
不意に脳裏に甦ったからである。

同じなのだ。
あの時、テレサを守る為に行動を起こした大介の姿は。
美雪を思い、守る為に戦おうとする次郎の姿勢と。
そしてそれは嘗て、自身も体験した事だった。

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