Data.4-17

元々が好戦的な上条に加え、
今では完全に頭に血が上った状態の次郎。
二人が取っ組み合って殴り合いしているのを
美雪はハラハラとしながら見守っている。

「お…お父さん…?」
「良いんだ。やらせておけ」
「で、でも…」
「男はな、拳で語り合う事も必要なのさ」
「?」
「お父さんも昔はよくやったものだ。
 事有る毎に…島 大介とな」
「お父さん……」
「この経験は必ず糧になる。
 あの二人にとっても」

止める気等は毛頭無かった。
好きなだけ殴り合い、
腹に溜まった思いを吐き出せば良い。
理屈等ではない。
不器用な生き方しか出来ぬのならば
不器用を貫き通せば良いのだ。

取っ組み合いの大喧嘩は20分程で収まった。
暴言を吐き合い、殴り合う事で
お互いに何か納得した様でもある。
特に、上条は最初の思い詰めた様な表情ではなく
何処か吹っ切れたかの様に晴れやかだった。

「アンタ…結構、強かったんだな」
「偉大な兄貴を持つとね、何かとやっかまれてさ」
「…そう、だったのか」
「それで…へこたれる様なタマじゃなかったから
 喧嘩の腕だけは…磨いて、たんだよ…」
「成程な…」

床に腰を下ろしたまま、ボソボソと続けられた会話。
第一艦橋では恐らく
聞く事が叶わなかったであろう言葉。

「甘ったれるなよ」

次郎は視線を合わせる事無くそう呟く。
上条に対して吐いた言葉か。
それとも、未だに兄を意識する自分に対してか。

「背中を追っ掛けてる内は
 決してその相手を追い越せないんだ。
 認めてもらいたいなら追い越すしかない。
 でなきゃ俺達は何時まで経っても
 【二番煎じ】のままだ…」
「島……」
「お前は【戦闘班長】なんだろう? 上条」

痣だらけで頬が腫れ上がったその顔には
苦悶の表情等は無かった。
穏やかな微笑。
上条も同様に。

「…そう云う、事だったんだな」
「まぁ…そう云う事だ」

次郎と上条は互いにそう呟くと
どちらとも無く手を差し出した。

* * * * * *

「艦長」

次郎は古代に声を掛けると
直立のまま頭を下げた。

「申し訳有りませんでした」
「……」

古代は顔を上げる事無く、
しかしその肩が微かにだが震えていた。

「艦長…?」
「…くっくっく」
「…?」
「ははは、あははははっ」

どうやら笑いを噛み殺そうとしていたらしい。
堪え切れずに笑い出した古代の表情は
やはり晴れ晴れとしたものであった。

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