| Data.4-19 |
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派手に顔を腫らせたまま、 仲良く医務室に現れた2人に対し 美晴は唖然としていた。 が、やがて理解出来たのか 美晴は苦笑を浮かべながら 消毒薬を取り出す。 「良いわね、若さってさ」 「美晴さん……。 俺よりも年下でしょうに?」 「女は男よりも 心の年齢が上なのよ。 ほら、ホッペタ出して!」 「は…はい。痛っ!」 「少し位は我慢しなさい」 美晴は笑いながら 頬に消毒液を塗り、絆創膏を貼って パンと叩いてみせる。 「次、上条ね。 アンタも派手に やらかしたわねぇ〜?」 「へへ、男前になった?」 「まぁ、そこそこね」 「そんなモンか?」 「男前にはまだまだ遠いわよ。 2人共、これからって所かしら?」 「じゃあ美晴さんの言う 【男前の基準】って?」 「古代艦長の様な?」 美晴は一瞬だけ視線を美雪に移した。 そして何事も無かったかの様に そのまま再び視線を戻す。 「そうね。艦長も素敵だけど…」 「?」 「私が【男前】と呼ぶ基準とは違うかな?」 「え?」 「私にとっての男前は… もう少し寡黙な人、よ」 明らかに曇っていく表情。 その人物が既に この世に存在していない事を 次郎は直ぐに理解した。 きっと、美晴にとっては 何よりも掛け替えの無い 人物であったのだろう。 軍医専業となった彼女が それでも古いゴーグルを手放さない理由。 それは、きっと…。 「形見、だったんですね。 そのゴーグルは…」 「気が付いた? 流石ね、次郎君」 「美晴先生……」 寂しそうな微笑。 それは古代が昔よく見せていた 孤独で酷く不安げな表情を 嫌と云う程思い起こさせた。 最愛の存在を喪った者だけが解る 辛く、苦しい共通点。 「大切に…なさって下さい」 「えぇ、有難う」 美晴は愛する者との死別を乗り越え このヤマトで今も戦っている。 生きる為の戦いを。 『俺だけじゃない。 皆、傷付きながらも懸命に 歯を食い縛って前進しているんだ。 明日を信じて。 希望に…向かって……』 自分も同じだと次郎は感じていた。 そしてそれこそが 志半ばでリタイアを余儀なくされた 敬愛する兄に報いる術だと云う事も 彼は熟知していた。 『その中心に進が居る。 誰よりも、生きる事の大切さを知る男が。 だからこそ俺達は彼を中心に 此処迄纏まれる事が出来るんだ…』 一人物思いに耽る次郎を 上条は静かに見つめている。 その瞳は自愛に満ちており 優しく、見守る様でもあった。 |