| Data.4-5 |
|---|
「お父さん?」 艦長室の扉に向かって声を掛けるが 中からは物音一つしない。 美晴から看病を頼まれ 美雪は医療用具のバックを持って 先程から扉の前で躊躇している。 「入っても良いのかな? あ、でも…扉に鍵が掛かってるかも」 手を伸ばしてみると、 想像に反して扉が難無く開いた。 「…無用心」 こう云う所を『だらしない』と 糾弾するのが美雪である。 「お酒臭〜い…」 最近の古代は殆ど飲酒などしていない。 だが、以前栓を開けたまま放置したままの 酒瓶があちらこちらで散らかっている。 どうやら船長時代から 自室掃除は殆どしなかったのだろう。 思春期で微妙な年頃の美雪にとって 父親のこう云う姿は出来れば見たくはなかった。 「お父さん、寝てるの?」 やはり返事は無い。 代わりに聴こえて来るのは寝息である。 雑多な部屋ではあるが 何故か作業机の上だけは綺麗で そっと置かれた写真立てが余計に目立った。 自分と、両親が写る家族写真。 笑顔を浮かべる自分に対し、 悲しげな瞳の両親。 見る度に違和感を覚えた、あの写真。 「…持ってたんだ。 意外だなぁ……」 机に近付き、そっと写真立てを掴む。 若干埃は付いていたが それ程汚れたりはしていなかった。 「…あれ?」 美雪は写真立ての中身に目をやる。 家族写真の裏にもう一枚 何かが挟まっていたのだ。 「何だろう、これ?」 好奇心から手が伸びる。 しかし一応は父親の私物。 見るべきか否か、暫し悩んでしまう。 「見ちゃおうかな? お父さん、隠し事多いんだもん」 言い訳なのは解っている。 それを証拠に 美雪は何度か父親の顔色を伺う様に 古代の方をチラチラを見ていた。 せめてこの時に寝返りでも打ってくれれば 美雪も思い留まる事が出来たであろうに。 だが、現実はと云えば 心身共に疲労した古代は 相当に深い眠りに落ちていたらしく 身動き一つしなかった。 「良いよね…。 後で判らない様に戻せば……」 美雪は自分の好奇心に 打ち勝つ事は出来なかった。 自制するにはまだまだ 精神的に幼かったのだ。 「お母さん以外に恋人でも居て その人の写真でも入ってるのかな? それともラブレター? でも、そんなの残してたら お母さんに対して失礼よね。 まぁ、もしそうだったら 私が一番許さないんだけど。 お母さん、お父さんに対しては 甘過ぎるんだもの…」 勝手な事を口にしながら 美雪の指はゆっくりと 写真立てから2枚の紙を 引き出していた。 |