| Data.4-7 |
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久々に良い夢を見た。 古代はゆっくりと瞼を開く。 ボンヤリとした視界の先に 誰かの姿を確認した。 黄色の戦闘服。 あの衣装は、雪…? いや、雪は此処に居ない。 だとすれば…。 「…美雪?」 覚醒するには 暫しの時間が掛かりそうだが 古代はそれでも努めて 笑顔を浮かべて見せた。 だが、視界がハッキリするにつけ 美雪の表情が強張っている事に気付く。 「美雪、どうした?」 小刻みに体が震えている。 手に持っているのは 自分が隠し持っていたあの写真。 雪、そして大介と共に写した 自分の宝物の一枚。 「どうして…?」 声迄も震えている。 涙を堪えながら、 美雪は声を振り絞っていた。 「どうしてなの…?」 「美雪……?」 「お父さんも、お母さんも… 私と一緒に写した写真じゃ こんな風に笑った事無かった。 どうして私じゃ駄目なの?」 「美雪……」 「どうしてこの人じゃないと 笑えないの? 私とじゃ、こんな風に 笑ってはくれないのっ?!」 美雪は感極まり、叫んでいた。 そして…力任せに 写真を引き裂いたのである。 悔しかった。 悲しかった。 自分の知らない父親と母親の表情。 それを独り占めしている 写真の中の青年に 彼女は嫉妬していたのだ。 只の紙屑と化した嘗ての宝を 古代は無言で見つめている。 何も言わない。 否、何も言えない。 声が…出ないのだ。 この写真に救われて来た。 どんな時も、辛い時こそ この写真を一人眺めながら 嘗ての旅に思いを馳せ 自身を奮い立たせて来た。 だが、それはもう叶わない。 「…お父さん」 美雪の呼び掛けにも答えない。 黙って下を向いたまま。 全てを突き放すかの様な そんな威圧感さえ漂っている。 異様な古代の雰囲気に 美雪は漸く 自分が仕出かした事の 重大性に気付いた。 しかし、全ては後の祭りである。 『怒られる』 そう覚悟した。 怒られるだけで済めば まだマシな方かも知れない。 目を強く閉じ、体を硬直させる。 平手打ち位は来るだろう。 そう思っていたからの姿勢。 だが、古代は動かない。 視線は相変わらず下を向いたまま。 「…美雪」 その声は、美雪の意に反して とても優しげなものだった。 「御免な、美雪」 「…お父、さん…?」 「お前に又、辛い思いをさせて… 済まなかったな。御免……」 思ってもいない事だった。 明らかに悪いのは自分なのに まさか父親の方が謝罪を入れるとは。 美雪は、今の状況が信じられず 唖然としたまま声も出なかった。 |