| Data.4-8 |
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「御免な、美雪…」 ゆっくりと顔を上げる古代の表情は 何処か振り切れた様に 毅然と、それでいて優しげな笑顔だった。 「お父さんは…一度もちゃんと お前と顔を向き合わせていなかった。 過去に逃げてばかりで お前とお母さんを守ろうとしていなかった。 だから…写真にも表われてたんだな。 お父さんの弱さが、きっと……」 「お父さん……」 「御免な、美雪。 でも、もう大丈夫だ。 お父さんは、前を向いて生きる。 そう…約束したから」 「…この写真の人と?」 「そうだ。 彼は【島 大介】。 次郎の…実の兄貴だ」 「島さんの…お兄さん……」 「お父さんとお母さんにとっては とても大切な、人だったんだ……」 今でも大介の事を思い出すと 胸が締め付けられる。 心が痛む。 だが、古代は敢えて言葉を紡ぐ。 知って欲しかった。 島 大介の事を。 自分の愛する娘、美雪に。 「死に際、彼奴はこう言い残した。 『雪を幸せにしろ。 不幸にしたら、俺が許さないから』と。 でも…お父さんは お母さんもお前も苦しめたままだった。 島は…きっと怒ってるだろうな、って思うんだ」 「…私は」 「…?」 「私は、幸せだよ」 「美雪……」 「少なくても、不幸じゃない。 だって……」 「……」 「お父さんと、お母さんの間に 産まれてきたから……」 「美雪……」 美雪からこの様な言葉が聞けるとは。 古代は思いもしていなかった。 ヤマトの乗組員と成る事で 彼女に何らかの成長を促したのだろうか。 嘗ての自分達と同様に。 胸が熱くなる。 この思いをどうやって表すべきか。 何度悩み、考えても 浮かんでくる単語は『一つ』しかない。 「有難う……」 「お父さん…」 「有難う、美雪。 本当に…有難う……」 漸く伝えられた。 誰よりも愛する我が娘に。 どれだけ夢に見て来ただろうか。 こうやって優しく抱き締め 感謝の思いを伝える事を。 「有難う…美雪……」 「…照れ臭いよ、お父さん……」 美雪はと云うと 悪態を吐いてはいるが 心からではなく 寧ろ、喜びを隠し切れずに 困惑している様であった。 『大介…お前の御蔭だな…。 こうして俺は、美雪と 親子の関係を取り戻す事が出来た…。 本当に、有難う…大介……』 ずっと、切っ掛けが欲しかった。 その切っ掛けが やはり大介に繋がっていた事を 古代は今更ながらに感じていた。 『死しても尚、お前の想いは 俺達家族を守ってくれている…。 俺は今度こそ お前のその想いに答えなければな…』 |