Data.5-2

これは人工の湖、なのだろうか。
水晶で造られたかの様な城。
森の緑、水や空の青と相俟って
素晴らしい美しさを演出している。

「…お父さん?」

美雪に声を掛けられる迄
古代は心奪われたかの様な表情で
景色に魅入ってた。

似ている。
余りにも似過ぎている。

「イスカンダル…」
「えっ?」
「まるで…イスカンダル星の
 クリスタルパレスを見ている様だ…。
 こんな事って…有るんだろうか…?」
「…お父さん」

強烈に引き寄せられてしまう。
過去の記憶に。
生命を懸けて戦い抜いた青春時代。

あの頃には雪も居た。
大介も居た。

「…今は、二人共……」

此処には居ないのだ。
自分の傍に、二人はもう居ない。

思わず洩らした独り言。
美雪も、そして次郎も
何も言わず、只 黙って
古代を見つめていた。

「艦長」

上条の声に、古代はハッとし
漸く意識を集中させた。
ゆっくりと此方に向かってくる人影。
惑星アクエスを治める女王の登場である。

『アクエスの女王…か。
 スターシァの様な女性なんだろうか…?』

少しずつ近付いて来る人影。
アクエスの女王の姿が、段々とハッキリ見えてくる。
長い純白のロングドレス。
そして…。

「っ!!」

古代は思わず息を飲んだ。

* * * * * *

「お待たせ致しました、地球の方々」

そう言って優しく微笑むアクエスの女王。
その姿に、誰もが言葉を失う。

こんな出会い方を、誰が予測出来たであろう。
彼女の姿形、声までもが
まるで今行方を探している
【古代 雪】そのものなのだから。
他人の空似なのか。それとも…。

「お母さん…?」

感極まったのだろう。
美雪は思わず彼女に駆け寄っていた。

「お母さん? お母さんなんでしょ?」
「こら、美雪! お前…」
「ねぇ、お母さんなんでしょ? そうなんでしょ?」

他国の、然も民間人である美雪の言動は
確かに女王に対して失礼以外の何物でもない。
古代が窘めるのも当然ではある。
だが、長きに渡り母と会えなかった娘の言動に
自制を弁えろと言い切る事も難しい。

女王はそんな美雪に対し
怪訝な表情を浮かべる事無く
寧ろ優しく抱きしめたのだった。

「…お母さん……?」
「美雪…元気そうで安心したわ」
「お母さんっ?!」

女王は静かに微笑み、肯定の意を示す。
何度も美雪の髪を愛しげに撫でながら。

「お母さん…、お母さん……」
「雪…。本当に、雪…なのか…?」

俄かには信じられない。
古代は驚きの表情を隠す事無く
目の前の女王、雪を見つめていた。

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