Data.5-7

「お父さん…」

月明かりを背に此方を見つめる美雪は
まだ泣いているかの様だった。

「どうした? 美雪」
「私……」
「……」
「……」
「…美雪?」
「私、ヤマトを降りる」
「降りて、どうするつもりなんだ?」
「此処に、残る…」
「美雪……」
「お母さんと一緒に
 アクエスに残る」
「美雪…」
「私、決めたの…」
「美雪…。
 今 ヤマトを降りれば、
 二度と地球には戻れないんだぞ?
 それでも…」
「……だって」
「だって?」
「お母さんが独りぼっちになっちゃうもの…」
「美雪……」

古代の脳裏に蘇る過去の記憶。
暗黒星団帝国の拠点、デザリアム星を去る時の
サーシャの姿、言葉、表情。

『従姉妹だからって…
 そんな所迄 似る必要等
 何も無かった筈なのに……』

悪態を吐きたくなる程に
美雪の覚悟が伝わってくる。
引き止めても無駄な事位
父親なのだから解っている。
娘とは云え、彼女も15歳になった。
いつまでも幼い子供ではないのだから。
自分の手元に留める事は出来ないのだ。

「…美雪」
「何?」
「…お父さんにも
 少しだけ、考える時間をくれないか?」
「…ん、解った」

微かに頷くと
美雪は再び青い月を見上げた。

* * * * * *

ヤマト機関室。
波動エンジンの調整も
いよいよ最終段階に入っていた。

「お〜い、翔!
 其処のボルト取ってくれ!」
「良いけど。
 今のスパナで大丈夫か?
 一寸口が大き過ぎね?」
「…若干、デカいかもな。
 スパナを替えるか」
「ほい、じゃあこれな!」
「サンキュ!!」

制御スクリーンを操る時とは違い
全身汗塗れの機械油塗れ。
所々で筋肉痛。
間接も悲鳴を上げている。

だがヤマトと直接触れ合う実感は
機関室に篭り、コンピューター制御だけをしていた
あの頃とは桁が格段の違いだ。

「へへ、俺達も漸く
 機関部制御席担当を誇れるってもんだぜ」
「大口叩いてるとさ
 又 機関長にドヤされるぜ、走」
「それもそうだな。
 サッサと調整を終わらせないと…」
「ヤマトは俺達の腕に掛かってるんだから!」
「そっ! そう云う事…だっ!!」

最後のボルトを締め直し
走は満面の笑顔を浮かべた。

「よし、一丁上がりッ!!」
「これで何時でも発進出来るぜ。
 やっぱ俺達って最高〜♪」
「ひとっ風呂浴びて来るか。
 機関長の駄目出しが出ない事を祈るよ」
「それを言うなって、走…」
「はは。冗談だよ!
 じゃあ行くぜ、翔!」
「おう!!」

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