| Data.5-8 |
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妻に、娘に、 一体…何を残せると言うのだろう。 ずっと、考え続けてきた。 愛と呼ばれる感情を 形にして残せるのであれば、 自分ならばどんな形を 作り上げる事が出来るのだろう。 「雪や美雪の為に… 俺が出来る事…。 それは、やはり……」 視線の先には長年の相棒。 「お前だってきっと… その【選択肢】に決定するだろうな。 大介……」 雪から聞かされた惑星アクエスの危機。 心は既に決まっていた。 「ヤマトは…退かない。 どんな奴等が相手だろうとも」 間も無く夜が明ける。 「美雪…。 これが父親としてお前にしてやれる 唯一の事かも知れない。 お父さんは… お前とお母さんの居るこの星を 必ず、護るぞ…」 次郎は部屋を抜け出し 庭園から星空を見上げていた。 「…来るなら来てみろ、侵略者め。 どんな事が有ろうとも 俺達はこの星を護ってみせる」 決意は固かった。 彼の心の中にも、初代航海長の姿は 強く、濃く残っている。 いつも最善を尽くし、どんな時も諦めず 最期まで戦い抜いて来た漢。 これ迄はその背中を無心で追っていた。 だが、今は…。 「今のヤマトの航海長は俺なんだ。 俺が、皆を守るんだ」 次郎の意識は少しずつ変化していた。 嘗ての兄の様に、 そして…それ以上に。 「艦長代理!」 不意に声を掛けられ、 次郎は思わず背後を振り向く。 其処には上条が立っていた。 「上条…」 「驚いたか?」 「あぁ…。 今は別に【島】でも良いだろうに…」 「まぁ、な」 上条は周囲を気にする素振りで ゆっくりと此方に近付いて来た。 「…単刀直入に聞く」 「何だ?」 「この戦いに勝てると思うか?」 上条は文字通り ストレートに意見をぶつけてきた。 次郎の人柄を信頼した上での行動である。 「敵の出方にも依るが… 恐らく、勝算は薄い」 「根拠は?」 「此方は戦力がヤマトしか存在しない。 ヤマトの敷く防衛ラインを超えられたら…。 この星自体は丸腰だからな」 「全くの同意見だよ」 「上条……」 「正にヤマトの存在が この星の存亡を握っている」 「あぁ…」 「だからこそ、戦い甲斐が有るって事だよな」 「…その通りだ」 「島……」 「出陣するからには勝つ。 俺達は、宇宙戦艦ヤマトのクルーだ」 次郎の返答に対し 上条は満足げに微笑んでいた。 青白く輝く月に雲が掛かり 朧げに夜空を照らしている。 避けられない戦いが 刻一刻と近付いていた。 |