Vertriebene・10

「これで解ったかな?
 この【忘れ去られし村】はその名の通り
 存在を忘れてもらう為にこそ在った。
 時の権力者、力を求める暴君から
 この2人の兄弟を守り抜く為に。
 それが…【シンダル族】である私の役目でも有る」
「シンダル…族? オキタさん…貴方、が…?」
「そうだ。紋章と共に生きる民。
 紋章の加護に感謝し、その存在を見守る者。
 私は、【シンダル族】の末裔でもある」
「…そう、だったんだ。
 だから帝国は村を襲った。
 その狙いは…【真なる16の紋章】を手に入れる為……」

沸々と怒りがこみ上げてくる。
只の欲望の為だけに、
帝国はこの村を焼き払ったのだ。
あらゆる物を奪われ、それでも尚
懸命に生きてきたこの双子と、
そんな彼等を温かく守ってきた人々から
一体どれだけのものを奪えば気が済むと言うのか。

「許せない……」
「ススム…?」
「例え故郷だろうが、何だろうが…
 俺はこんな理不尽な仕打ちを許せない!
 許せる筈が無いっ!!」
「ススム……」
「俺は…戦う。
 例え兄と剣を向け合う事になったとしても
 帝国に正義等無い以上、俺は退けない」
「…しかし、それは……」
「俺はマモル・コダーイの弟である以上に
 【氷の乙女】アキコ・コダーイの息子だ。
 母は不正を嫌い、弱き者の為に戦って来た。
 なら息子である俺も、それに習って生きるべきだ」

ススムの心は決まった。
裏切り者の汚名を受けてでも、
この不条理を正す為に戦う、と。

「ススム様、その言葉を待っておりました」
「アキラ…?」
「俺もお供させて下さい。
 必ずや悲願を果たしましょう」

アキラは微笑を浮かべながら
ススムの思いを後押しする。
共に騎士として訓練していた頃から
彼が一騎士で生涯を終えるとは思っていなかった。
必ず、大義の為に立ち上がる存在だと
アキラは信じていたのである。

「腐れ縁だもんな。
 俺も、とことんまで付き合うよ」
「アルフォン…」
「もう戻れない。戻る場所すらない。
 ならば…自分達を信じて戦うだけだ」
「あぁ…。取り戻そうな、俺達の居場所」

「若長、俺もやるぜ!
 だからよぅ、もう一人で苦しまんでくれ」
「サイトウ……」
「若長、ジロウさん。
 村長やアンタ達が俺を助けてくれた恩
 一生掛かっても返すからな!」
「有難う…サイトウ……」
「済まない…サイトウ…。俺達は……」
「おぉっと、いいっこなしだぜ!
 なぁ〜、騎士様よぉ〜!」
「…俺はもう騎士じゃない。
 【ススム】で充分だよ、サイトウ」
「ははは、それもそうだな!」

若者達がそれぞれに覚悟を決め、
勝利を誓い合っている。
オキタは目を細めながら
若き星々の輝きを見つめていた。

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SITE UP・2010.12.18 ©森本 樹

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