騎士に成るのは【義務】とすら思っていた。
だからこそ、こうして正式に拝命されても
喜び以上に責任を重く感じ取っていた。
「おめでとう、ススム。
これでお前も晴れて
名誉有るコダーイ家の騎士だな」
「おめでとう、お兄様。
私も間も無く、お兄様同様の騎士に成るから」
「有難う、マモル兄さん。ミユキ」
尊敬する兄から騎士の剣を与えられ
これで漸く俺は
【コダーイ家】の一員として認められるだろうか、
なんて考えていた。
次男である俺に家督相続権は無い。
騎士に成る事でしか、自分を示せない。
だから、重圧に感じていた。
漸くそれから解放されるのだと思うと
感慨深くもなりそうなものなのに。
「おめでとう御座います、ススム様」
「アキラ、止めてくれよ…。
立場から言えばこれで俺達は同等なんだし」
「いいえ、それは違いますよ。
俺はススム様がこの道を選ばれたからこそ
騎士を拝命出来たんですから」
「なぁ…アキラ」
「何でしょうか?」
「騎士に成って…嬉しい、か?」
「?」
「いや…何でも無いよ。忘れてくれ」
「一つだけ、お伝えするなら…」
「何?」
「俺は、ススム様と同じ道を歩める事が
とても嬉しいです。
例え騎士以外の道でも、それは同じですよ」
「アキラ…有難う……」
幼い頃から共に育った乳兄弟のアキラ。
兄や妹にも言えない思いは
全て彼にぶつけてきた。
身寄りの無い彼の存在は、
居場所を見出せない俺のそれと何処か似ている。
勝手に、そう思っていた。
だからこそ、甘えられたのだろう。
「拝命式も終わりましたし
明日からは、いよいよ騎士の仕事に入りますね」
「あぁ、そうだね。
今日は早く休もうか」
「そうしましょう」
* * * * * *
翌朝。
俺はいつもより早く目が覚めた。
眠れなかった訳ではないが
目覚めは意外とスッキリはせず
何とも言えない心のもやもやを感じていた。
何かを予感していたからだろうか。
「ススム様、おはよう御座います」
「おはよう、アキラ。今日も早いね」
「いつも通りですよ」
そうなのだ。
騎士訓練生の頃と何ら変わらない筈の朝。
俺はどうしてこんなに不安なんだろう。
「いよいよ今日からですね。
流石に緊張してしまいます」
「アキラも?」
「勿論ですよ。訓練と実戦は違います。
相手は手加減などしてくれませんから」
「そうか…。そうだよな」
「?」
「こっちの話…」
この違和感は【初陣故の緊張】なのだと
この時は認識していた。
そんなに大差は無かったかも知れない。 |