Vertriebene・3

民族衣装なのだろうか。
この薄寒い森の中でも
ダイスケは実に薄着だった。

動き易さを重要視しているのだろうが、
それ故に無防備な感じでもある。

この村の男達はどう思っているのか不明だが
少なくとも俺の知る限り
アカツキ帝国の騎士団の中には
非常に好色な輩が存在していた。
【英雄 色を好む】とは言うが、
彼等はそれこそ見境も無かった。

『いずれ戦うと云うのであれば…
 コイツも奴等の恐ろしさを
 身を以って知っておかないと駄目だ』

言い訳である。
そんな事は判っている。

俺は愛撫と呼べない位乱暴に
ダイスケのシャツの下へ手を滑らせた。
鍛え上げられた胸板が少し動く。
反応しているのではなく、驚いたのだろう。

「…ススム?」
「ダイスケ。
 お前は生まれてから今日まで、
 村から一歩も出ていないんだって?」
「…まぁ、そうだが。
 でも村の周辺の哨戒位は…」
「散歩程度の外出だな。
 世間知らずも良い所だ」
「え?」

「お前は何も解っていない。
 良いか? 俺とアキラ達は元帝国騎士だ。
 何時この村を裏切って帝国に帰るか判らない存在だ」
「……」
「お人好しも今夜限りにするんだな」
「お前は…帰らないよ」
「ダイスケ……」

「お前も…アキラ達も……
 帝国に戻ったりしないさ。
 例え、戻れる道が残っていたとしても…だ」
「……」
「俺は、お前を信じてる。ススム…」

一瞬、カッとなった。
その次には、ダイスケの頬を打っていた。

コイツは莫迦だ。
世間知らずやお人好しの類より
ずっと、もっと性質が悪い。

「…気に、障ったか? 済まん……」
「あぁ、気に入らない」
「ススム……」
「お前のその、優しさが…癪に障る!」

罵って欲しかったのに。
怒鳴りつけて欲しかったのに。
何故お前は、こんな醜い心まで受け止める?
俺は何処までも残酷に成るだろう。
もう…止められない。

俺はすぐさまダイスケの上着を脱がせ、
取り外したベルトで後ろ手に縛り、
そのまま四つん這いに固めた。

「教えてやるよ。お人好しのダイスケ君」
「…な、何……?」
「俺の故郷ではな…
 弱者はこうやって、強者に喰われる定めなのさ」
「喰われる…?」
「そうだよ、世間知らずのダイスケ君。
 その身体に、タップリと教えてやるよ。
 コレが俺の…【最期の】優しさだ……」
「……」

【最期】と云う単語に
ダイスケはあからさまな嫌悪感を示した。
初めて見せた、彼の怒り。
何に対して怒ったのか、理解は出来ないが。

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SITE UP・2010.10.20 ©森本 樹

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