Meeting of Fate・10

「森へ…急ごう」
「ススム?」
「ススム様……」
「明日、マモル兄さんの軍が彼等の村を焼き討ちにする」
「な…何だってっ!?」
「阻止する事が叶わないのであれば…
 せめて、村の人々を安全な場所へ避難させたいんだ」
「…でも、そんな事をしたら俺達は本当に……」
「生命の恩人を見殺しにするつもりか、アルフォン?」
「……」
「俺は行く。例え一人になっても…」
「俺は勿論、同行致しますよ。ススム様」
「アキラ…」
「…乗り掛かった船だ。仕方が無い、行くか」
「アルフォン…有難う。じゃあ、急ごう!」

時間は無い。
俺達は急いでグレッグミンスターを離れ、
ダイスケ達の住むあの森へと向かった。

* * * * * *

いつもの様に村を警備しているサイトウの姿を見付け、
俺達は大慌てで焼き討ち計画を捲くし立てた。
雨雲の間から朝陽が差し込んでいる。
本当に、時間が無いのだ。

サイトウも状況を把握したのか、
直ぐに俺達をオキタ村長に引き合わせてくれた。
勿論、其処にはダイスケとジロウの兄弟も居る。

「良いのか、お前達。
 俺達にその情報を漏らしたとあっては…
 もう二度と故郷の地を踏めなくなるんだぞ?」
「人でなしには成りたくない。
 俺達は、俺達に出来る最善の方法を取るだけだ。
 俺達が時間を稼ぐから、ダイスケ達は…」
「それは出来ない」
「どうしてっ?! 時間が無いのに…」
「村を出る手筈は整っている。
 この村は元々キャラバンの形態に近いからな。
 何時如何なる時も移動出来る様、準備に抜かりは無い」
「ならば…少しでも速く……」
「此処を出る時は…お前達も一緒だ」
「?!」
「命懸けで俺達を救う為にと来てくれたのだろう?
 恩人を見殺しにして逃げ去る様な人間は
 この村に一人も居ないよ」
「だけど…ダイスケ……」
「父さん。ススム、アキラ、アルフォンの同行をお許し下さい。
 責任は俺が取ります」
「俺からもお願いします、父さん!
 彼等の事は、俺とダイスケ兄さんが必ず」
「……」

村長の言葉は無い。
当たり前だろう。
俺達こそが今回の火種なのだから。

だが、村長は俺達にそっと微笑みかけてくれた。
そして微かに指を動かす。
それだけで村人達は理解したのか、動きが一層激しくなった。

「間も無く選抜隊が森に入る頃だ。
 お前達も我々と共に来なさい」
「オキタ村長……」
「異論は現状を無事に乗り越えてからだ。
 さぁ、速く支度を」

俺達はそのままダイスケやジロウに連れられ、
村人と共に森を抜ける為、歩き出した。

* * * * * *

足早に森を駆け抜けて正午の太陽が照り始めた頃
風がキナ臭い匂いを運んで来た。

「…村が」

アルフォンの声に、俺は漸く視線を後ろに向ける。
其処には…嘗ての村が有った場所は無残にも火の海と化していた。
これでは何も残されない。
容赦無く、森の全てが焼き払われたのだ。

「……」

これが…帝国の言う【正義】なのだ。
そして兄は…帝国の狗と化した。

「こんな事が…許される筈が無い…。
 絶対に許されては…いけないんだ……」

村の残骸を見つめる時間すらなかった。
しかし、燃え盛る森の状景を、その惨劇を
俺は決して忘れない。

[9]  web拍手 by FC2   [3-1]



SITE UP・2011.07.03 ©森本 樹

【書庫】目次