「覚悟は、出来ている様だな…」
「……」
兄さんはそのまま、愛用である大剣を鞘から抜いた。
そっして切っ先を俺に向けてくる。
「マモルお兄様! 止めて下さい!!」
「マモル様…」
「前言を撤回する気は?」
「全く有りません。
首を刎ねると言うのならば、どうぞ」
「……」
ガンっと云う大音響と共に
大理石製のダイニングテーブルが真っ二つに割れた。
ミユキは流石に言葉を失った様だ。
「お前の帰還は、見なかった事にしておく。
さっさとこの屋敷から姿を消すが良い」
「……」
どうやら、見逃してくれるみたいだ。
俺は軽く会釈をすると、そのまま部屋を後にする。
もう…こんな場所には居られない。
「ススムお兄様!」
「捨て置け、ミユキ」
「だけど…こんな事、あんまりです!」
「…諦めろ。これが【騎士】と云うものだ」
「……」
マモル兄さんとミユキの会話が遠くなっていく。
俺は手早く荷物を纏め、
小雨の降る街中へと歩を進めた。
* * * * * *
「アキラよ」
「…はい、マモル様」
「お前も、行くのか……」
「ススム様のお傍に居る事が、母上様の望みでしたから」
「あれは謀反人となり、裁かれる身だ。
それを承知で…」
「無論です。裁かれるのであれば、私も共に」
「…ススムは、幸せ者だな」
マモルはまるで泣き出しそうな笑みを浮かべている。
そして優しくアキラの両肩に手を添え、
震える声でこう、囁いた。
「ススムを…。我が愛する弟を、どうか守ってやってくれ。
そしてあの子の【正義】を…支えてやってくれ」
「マモル様……」
「私にはどうする事も出来ぬ。
最早、どうしてやる事も出来ないのだ…」
「解りました。どのような事が有ろうとも、必ず」
「有難う…アキラ……」
アキラも又、マモルに微笑み返すと
ススム同様に会釈をし、部屋を後にした。
「マモル様…。宜しいのですか?
大帝に助命を嘆願なされた方が……」
「いや、今の大帝に助命嘆願は聞き入れて頂けぬだろう」
「やはり…そうで御座いますか……」
「心苦しいが、やるしかないのだ」
「…御意」
マモルとコノマの決意。そしてアキラの思い。
ミユキはそんな彼等の遣り取りを
ただ黙って見つめている事しか出来なかった。
* * * * * *
門を出た所で、俺とアキラはもう一つの人影を見付けた。
アルフォンである。
「アルフォン…どうして……?」
「敗走兵は…我が家の恥曝しだと言われてな。
追い出されてしまったよ」
「…お前も、か」
「…アカツキ帝国は、最早俺達の敵でしかないって事だ」
行き場を失った俺達3人。
雨は段々と本降りとなっていく。
「どうすれば良いんだろうな、俺達…」
「さぁ…何ともしようが……」
苦悩するアルフォンとアキラ。
だが、俺には行かなければならぬ場所が見えていた。 |