Wandering Genie Stratege・1

村を去り、森を彷徨って
もうどれ位過ぎただろうか。
ただひたすらに逃げ続け
皆の疲れも見え隠れし始めている。

「あと少しで森を抜ける」

オキタさんの声に
俺は一瞬だが頬の緊張が解れた。
しかし。

「森と抜けるとなると…
 目立ちますね。
 まだ帝国領内ですし、油断は出来ません」

ダイスケの言葉に思わずハッとする。
そうだ。
却って危険になるのだ。
早く帝国領から脱出しないと。

「何処かに宛てはあるのですか?」
アキラの声に、オキタさんは静かに頷いた。

「群島諸国に出れば旧知の友が居る。
 だが、其処までどうやって行くかが問題だな」
「帝国に知られない様に
 群島諸国迄、移動…か」

確かに気が遠くなりそうな計画ではある。
が、生き残る為には恐らく最善の策になるだろう。

「暫し此処で案を練るとしよう。
 皆で、今日はゆっくりと休むとするか」
オキタさんの言葉に、俺達は頷くしかなかった。

* * * * * *

「なぁ、ダイスケ?」
「ん?」
「群島諸国って…知ってるか?」
「初めて聞いた」
「…だろうな」

周囲の警備に当たりながら
俺達は会話を続けている。

「南の…とても暖かい土地だ。
 周りを海に囲まれて、此処とはまるで違う景色」
「ススムは行った事が有るのか?」
「あぁ、昔な。
 母さんの遠征に連れて行ってもらったんだ…」

不意に寂しさで心が苦しくなる。
母さんの事、ミユキの事、そして…。

「大丈夫だよ、ススム。
 きっと解ってくれるから」
「…ダイスケ?」
「お前の家族はきっと、
 ちゃんと理解してくれているよ」

俺の気持ちを見抜いていたかの様に
ダイスケはそう言って微笑むと、
俺を優しく抱き締めてくれた。

「一人じゃない。一人にはさせない。
 どんな時だって俺が居るから」
「…あぁ、ダイスケ」

心も体も温かく満たされていくのが解る。
とても安心出来る。
どの位そのままで居ただろうか。
俺は、彼に微笑み返すとそっと体を離した。
これ以上は甘えていられないと思ったから。

「有難う、ダイスケ」
「お互い様だよ」

こう云う嫌味の無い返し方は
やはり庶民感覚と云うのだろうか。
今迄俺が出会った人々とは
やはり違う【何か】を感じさせる。

「ん? どうかした?」
「……何でも無い」
「?」

ずっとダイスケの顔を見つめていたからだろう。
何事かと思ったみたいだ。

「何でも無いよ。
 さぁ、パトロールの続きだ」
「そうだな」

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SITE UP・2011.07.14 ©森本 樹

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