Meeting of Fate・5

「気が付いたか?」

ダイスケの声に反応し、
俺は思わず起き上がろうとした。

「つっ……!」
「無理はするな。
 まだ体の節々が痛むんだろう?」
「……」
「何だ?」
「俺を…殺すのか?」
「まさか」

ダイスケはずっと微笑んだままだ。
先程迄の殺気は何処にも無い。

「手荒な真似をして済まなかったな。
 サイトウにも、後で詫びさせる」
「……何故?」
「ん?」
「俺は…お前達が反乱分子だと聞かされた。
 お前達を倒さなければ帝国が危険だと…」
「俺達にそんな意志は無いよ。
 この森の奥深くで、静かに暮らせさえすれば良い。
 もし邪魔だと言うのであれば、
 この森を去り…何処かでひっそりと暮らすだけだ」
「……」

聞かされた事実とはまるで正反対だ。
だが…不思議とダイスケの言葉から嘘は感じられない。
俺達を見殺しにした隊長の言葉なんかよりも
余程、心に優しく染み入ってくる。

「サイトウ」
「はいよ。何だ、若長?」
「村に伝令」
「解ってるよ。非常事態だからって…」
「違う」
「…へ?」
「【俺の客人】が4人、村にやって来る。
 歓迎の準備をしてくれ」
「はぁ〜?」
「解ったな、警備隊長」
「……」

ダイスケの表情は変わらない。
彼は俺達を客人として
村に入れるつもりなのだ。
サイトウじゃなくても反対だろう。
だって俺達はその村を…。

「サイトウ。何度も言わせるな。
 客人は怪我をしているんだ。
 早く手当てをしなければならない」
「…解ったよ。お客さん、ねぇ〜」

サイトウも理解したのだろう。
疑いの眼差しは消え、笑みさえ浮かべている。

「ま、そう云う事だ。
 先程の件は水に流すとしようか。
 まぁ、そのなんだ。済まなかったな」
「…いや、俺達の方こそ……」
「急いで伝令に行ってくるぜ!
 応援も何人か寄越そう」
「頼む」

俺は何も言えないままだった。
ただ、優しげなダイスケの横顔を見つめるだけ。
こんな穏やかな表情をしながらも
村を守る為ならば、あの様に変貌する。
彼は正しく【戦士】なのだろう。

それに比べて俺は何だ?
【騎士】に成ったとは云うものの
その力は無力な民に向けられるものなのか?
そもそも【騎士】とは何だ?
母上は…この様な帝国を守る為に戦い
生命を落とされたと言うのか?
兄は、妹は…。

「ススム、だったね」
「……」
「疲れているんだろう?
 少し、休むと良い」
「しかし…」
「追撃も当分は来ないだろう。
 人の足音もしない。大丈夫だ」
「……」
「安心して、お休み…」
「…うん」

母上に抱かれている様な感覚。
俺はダイスケに抱き締められたまま
安心して眠りに就いていた。

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SITE UP・2011.06.05 ©森本 樹

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