マモル兄さんが帰宅したのは
日付が変わる頃だった。
険しい表情のままで俺を見つめるが言葉は無い。
長い、長い沈黙が流れた。
「…お前達が無事であった事は、喜ばしい」
「……」
兄さんは何かを言おうとし、又 躊躇している。
場の空気を読めば、それ位察知出来る。
俺もアキラも、そして同席するミユキやコノマ将軍も
一言も発言する事無く、待っている。
そして、その時が訪れた。
「大帝ズォーダー様より、勅命を賜っている」
「…勅命?」
「明日、山賊の根城である森の村を落とす」
「!!」
「兄さん! 何故っ?!」
「言っただろう。勅命だ」
「勅命って…だって彼等は山賊じゃない。
山賊行為なんてしていないし、此方が被害を被った訳でも無い!
なのに…どうしてっ?!」
「我々騎士にとって、勅命は絶対なのだ」
「それが間違っているのだとしても?」
「……そうだ」
最悪だ。
話にもならない。
山賊など、勿論…大帝のでっち上げた。
俺達は現に村の様子を見ている。
人々とも接し、彼等がそんな人間じゃない事を
この肌で感じ、この目と耳で見聞きして来たのだ。
「兄さん! 貴方は…弟である俺の話を
信じようともしてくれないのかっ?!」
「お前の言葉に一片の嘘偽りが無い事は解っている」
「だったら何故っ?!」
「それとこれとは別問題だ」
「……っ!!」
これが【騎士】なのか?
こんな下らない人間に成り果てる為に
俺達は血の滲む様な訓練を重ねてきたのか?
これでは…全くの無駄ではないかっ!!
グレッグミンスターの門を括った時に感じた違和感を
俺はしみじみと理解出来た。
そして、ダイスケ達の村で受けた心温まる交流が
途端に恋しくなってしまった。
あの村の人々達の方が、余程光り輝いていた。
「ススム、アキラ。
お前達もアルフォンと共に、明日 我が軍に配属となる。
詳細はコノマより…」
「…断る」
「……ススム」
「ススムお兄様……」
「ススム様……」
「無抵抗の人々を討つ等と…
母上の墓前に報告出来よう筈も無い。
外道にも劣る行為に手を染めるなど…
それこそ、コダーイ家の名に泥を塗る所業だ」
「ススム様! 口を慎みなさいませ!!
兄上様に対し、何と言う恐れ多い御発言を…」
「良い、コノマ」
マモル兄さんは、今迄見た事も無い険しい目で
真っ直ぐに俺を見つめてくる。
俺も負けてはいない。
そのまま、怒りの眼差しを兄さんに向け返した。 |