Wandering Genie Stratege・2

再び周囲の警備に当たっていると
不意に何かの気配を察知した。
草を踏む足音。

「…近付いて来る」
「人数は…1人、の様だな」
「追手かな?」
「いや、判らない」
ダイスケも三節棍を構えている。

カサッ。

一定のリズムが耳に届く。
そして、少しずつ近付いて来る灯。
松明の灯だろう。

「…誰だ?」

灯の先から声が聞こえてくる。
足音の主だろう。

それにしても…
この声には聞き覚えが有る。
昔、何処かで聞いた様な…。

「其処に居るのは誰だ?」

ゆっくりと近付いて来る声、姿。
俺はその人物を見て
思わず息を飲んだ。
この人は…確か……。

「ススム、か。
 お前が何故こんな所に…?」
「サナダさん……」

間違いない、この人はサナダさんだ。
兄さんの旧知の友。
そして俺やミユキに色んな事を教えてくれた人。
一時期、家庭教師として面倒を見てくれていた。

しかし、サナダさんは
ハルモニア神聖国に戻った筈。
俺は兄さんからそう聞いていたから。
でも、じゃあ何故…?

「怪我を、しているのか?」

危機感が無いのか。
ダイスケは疑う事無くサナダさんに近付くと
慣れた手つきで包帯を取り出して巻き始めた。

「私が敵かも知れぬのに…
 随分と優しいのだな」

サナダさんはそう言うと不敵な笑みを浮かべる。
氷の様な眼差し。
俺は一瞬たじろいだが
ダイスケはまるで気にしていない様子だった。

「貴方には殺気が無い。
 敵対しているのであれば
 少なからず殺気は感じられるものだ」
「ほぅ…」
「それに、戦う余力は残っていないだろう?」
「…その通りだ。其処まで見抜いたか」
「見抜いた訳じゃない。
 足音の間隔で、気が付いただけさ」

ダイスケがサナダさんの正体を知る筈は無い。
だからこそ、自分が感じるままに行動し
その判断の上で彼を助けたのだ。
あの時、俺達を助けてくれたのと同様に。

「ススム。お前はまだまだ甘いな。
 目に映る物が全てではない。
 そう教えてあっただろうが」
「…済みません、サナダさん」
「まぁ、逃亡者となったからには
 今迄以上に警戒するのが常だろうがな」
「サナダさん…?」

サナダさんはそう言うと
意地悪そうな笑みを浮かべた。
意味深な笑い方。
この人らしいと言えば、この人らしいが
どんな意味が含まれているのかを考えると
俺は不安で仕方が無かった。

サナダさんとの出会いは
一体、俺達に何を齎すのだろうか。

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SITE UP・2011.07.17 ©森本 樹

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