「この策にも1点だけ、問題が有る」
「問題? 何ですか、サナダさん?」
「どうやってアカツキ帝国領を抜けるか、と云う点だ。
兎にも角にも帝国領を脱しない事には始まらない。
いつマモルの軍と鉢合わせになるか判らないのだからな」
「…兄さんの、軍」
「都合良くハルモニアが軍を派遣するとも思えん。
あの国は漁夫の利を以って動くのを得意とする」
「…それでも、行くしかないでしょう」
ススムは力強くそう語った。
戦うと決めた以上、逃げる事も立ち止まる事も出来ない。
「そうだ、行くしかない。
抜けられるポイントは唯 1箇所だが…存在する」
「ガミラスへの脱出ポイント…。
それは一体、何処なんですか?」
「モラビアだ」
「モラビアの関所…。
しかし、あの場所には……」
「五大将軍が1人、ゴルイが駐屯する。
その位、知っての事だ」
「ススム…。ゴルイ将軍、とは?」
「俺も数回顔を合わせただけだが…物静かな人だ。
だけど、【帝国の盾】と呼ばれる剣豪で…
モラビアの砦は今迄一度も落とされた事が無い…」
「誰が『砦を落とす』と言った?」
サナダは少々呆れ顔ですぐさま言葉を遮る。
嘗ての家庭教師は、愛弟子の成長の無さに
苦笑を浮かべるしかない。
「あの関所は砦の堅固さに反して、警備が薄い。
ゴルイは部下のシーガルと共に
現在はグレッグミンスターに向かっている筈だ」
「ゴルイ将軍がグレッグミンスターに? 何故…?」
「このキャラバンを追撃する為か、若しくは…」
「若しくは?」
「ハルモニアの動きを警戒して、か…」
「……」
「いずれにしろ、今は砦の警護が更に薄い。
俺達の顔が警備兵一人一人にまで割れている可能性も低い。
事態が動く前に、急ぎ実行に移す必要が有るのは事実だ」
サナダは自身の作戦を一通り説明し終えた様だ。
再び、村人達の表情を伺う。
「進むか、留まるか」
「…行く、しか無いな」
「ススム…。そうだ、そうだな。
此処まで来たんだ。俺達は生き延びねばならない。
俺達を救ってくれた多くの生命の為にも…」
「ススム、ダイスケ。お前達の覚悟は理解した。
私も、サナダ殿の策が最良と判断する」
「父さん……」
「皆も異存は無いな。
此度の策、私が全責任を負う」
オキタの一声が全てを決めた。
モラビアを抜け、ガミラス領へ。
その先に待つ試練も何も見えないが、
それでもススム達は【明日】を信じた。
必ず、オベル王国へ。
その思いを抱いて。 |