翌朝、ススム達は森を抜けてモラビアへと入った。
行商人などのキャラバンの姿が数多く見える。
流石に彼等の姿もその他大勢に溶け込み、
町中では何事も起こりそうに無かった。
だが、問題は寧ろ関所に存在していたのだ。
「通行手形?」
「そうみたいなんだ…」
関所は此処最近の治安の低下を懸念し
帝国が発行した通行手形を持っていない者の立ち入りを
厳しく制限していると言うのだ。
「キャラバンがその為に足止め食らってるって」
「で、仮に発行されるとして…期間は?」
「半年は待たないと駄目だとか…」
「そんな…無茶苦茶だ」
「…困りましたね。半年待つなんて考えられない」
「そもそも、俺達に発行すると思うか?」
「それも…そうですが……」
「…悩んでいても始まらないな」
ススムはそう言うと、そのまま関所の方角を睨みつけた。
「…何を考えている、ススム?」
「怖い顔するなよ、ダイスケ」
「お前、自分を囮に陽動させるつもりだろう」
「……」
「ススム様、それはなりません!
でしたら俺が……」
「長距離攻撃専門のアキラには向いてないよ。
接近戦でも逃げ切れるだけの物が無いと」
「そう云う問題でも無い」
「ダイスケ…」
「それなら寧ろ、俺の方が適任だ」
「だ、駄目だ! だってダイスケは…」
「紋章の力を解放すればかなりの時間が稼げる。
それに、時間が稼げれば幾らでもお前達に合流出来る」
「……」
サナダもこの件にはかなり苦慮していた。
やはり此処は誰かが囮になるしかないのだろうか。
しかし、それが巧く行ったとして
囮役は巧く逃げ切れるのだろうか。
不安が尽きない。
「俺、サナダさんの様な良い作戦が思い浮かばない!
あぁー、莫迦はこう云う時に嫌だ!!」
何も閃かない。
だが、時間は容赦無く過ぎていく。
「こんな所でグダグダやっても始まらんよ。
酒場で情報収集するなり、小腹を満たすなり
少し頭を休めてみないとな」
ダイスケは苦笑を浮かべながらススムの肩を叩く。
日が翳り始め、影は長く尾を引いていた。
「宿屋に戻るか。
こんな所で集団会議してたら
それこそ不審者扱いで牢屋送りだ」
「縁起でも無い事言うな、ススムよぉ〜」
サイトウの情けない声に、
その場に居た全員が笑い声を上げた。
「確かに、腹も減ったな。
宿屋に戻って、腹ごしらえも大切だぜ」
「サイトウはお腹が空いただけでしょう?」
「アキラもだろ?」
「そうですね…。少し、減りました」
「俺もそう言えば腹が減ったよ…」
「アルフォンもか。
何だ、皆腹ペコだったんだ。
それじゃ良いアイディアも出ない訳だ」
「納得…」
「じゃあ、宿屋に戻ろう。
皆が心配するといけない」
ススムの呼び掛けに、仲間達は皆 笑顔で答えた。 |