酒場の賑やかな雰囲気に、ススム達は目を奪われた。
暖かな照明、酒を酌み交わす者達。
誰かの話し声が自然と耳に入るが
それは必ずしも喜ばしい内容ではない。
寧ろ、今の彼等には絶望的な内容ですらあった。
「ん?」
そんな時、ススムはふと奥のテーブルに目をやった。
ゴロツキに囲まれているらしい、一人の女性が目に入ったのだ。
「ダイスケ…一寸……」
「ん?」
ススムはそっとダイスケに耳打ちする。
女性が絡まれているから、助けようと言うのだ。
勿論、事を荒立てる等以ての外だと
サナダには激怒されるだろうから言える筈が無い。
「よし、乗った」
「お前なら解ってくれると思った。
じゃあ、コッソリと行くぞ」
「あぁ」
そのまま2人はスッと席を立ち、
何事も無かったかの様に人込みに紛れた。
勿論、この行動をオキタやサナダが見逃す筈は無い。
「…あの莫迦者共が」
「血気盛んな若者の正義感、収めるのは難しかろう」
「しかしながら…」
「行かせてやりなさい。
何か面白い土産を持って帰って来るかも知れぬぞ」
「…だと、良いのですが」
* * * * * *
「困ったわね…。
だから私は、そう云う類の職業じゃないの」
薄い桃色の髪をした女性はそう言うと、
眉間に皺を寄せながら溜息を吐いている。
「そんな魅力的な格好をしてつれない事言うなよ」
「今晩位、俺達の相手してくれたって良いだろう?」
「ならお金を払って相手してくれる人の所へ行きなさいな」
あからさまな不快感。
確かに、薄いベールに包まれるだけの肢体は
酒の入った男達には堪らなく映るのだろう。
相手の女性の気持ち等お構い無しに。
「オッサン達、好い加減にしろよ」
暫く様子を伺うつもりで居たが
余りにも男達が下品極まりない事に
堪忍袋の緒が切れたらしい。
ススムは、男の一人の腕を掴んでこう言った。
「その人、嫌がってるじゃないか」
「あぁ〜ん? ガキが何言ってやがる。
女ってのはな、こう言って男の性を煽るんだよ」
「彼女にも相手を選ぶ権利は有るだろう」
「何だとっ?!」
「まぁ、此処じゃ何だし。
外に出て話をしませんか?」
ダイスケはそう言いながらも、フンと鼻で笑って挑発する。
どうやらススムの言動よりも此方に腹を立てたのか
男達はススムとダイスケの後を追う様に酒場を後にした。
「…随分と優しい殿方だこと」
女性は自分を助ける為に飛び込んで来た2人の少年の後姿を
とても頼もしく見送っていた。 |