仲間達は関所越えの話し合い最中。
静かに時間は過ぎていく。
女性は何も言わず、黙ってススムを見つめ
そして一言だけ告げた。
「扉の先に進みたいのね」
「…え?」
「関所を封鎖して、夜な夜な酔っ払った門番に言い寄られるの。
私もそろそろウンザリしていた所。
さっさと此処からオサラバしたいわ」
「だけど…通行書が……」
「私に任せてもらえるかしら」
「え?」
「小さな勇者さん。
貴方の悪いようにはしないわ。
私を信じて頂けるかしら?」
「…こんな事をお願いするのは申し訳無いですけど、
でも…出来るのであれば、お願いします。
俺達、どうしても…関所を超えたいんです…っ!」
「その言葉が聞きたかったの」
女性はそう言うと、優しく微笑み
そっとススムの額にキスを送る。
勿論ススム自身、何が起こったのか理解出来ない。
ただ、オロオロと慌てるだけだ。
「小さな勇者さん。
お名前を教えて下さる?」
「ススム。ススム=コダーイです」
「ススム、ね。素敵な名前」
「貴女は…?」
「私の名はジーン。
縁が有れば、又 会いましょうススム」
「…はいっ!」
ジーンは微笑を浮かべたまま
物怖じする事無く関所へと向かって行く。
その後姿を見送りながらも
ススムは彼女がチャンスをくれた事を知り、
急いで仲間の元へと合流した。
* * * * * *
「ねぇ、門番さん」
「ん? 通行書が無い者は…」
「アチラでお話したい事が御座いますの。
来て下さらないかしら?」
「我々には任務が…」
「ねぇ、門番さん」
「……そうだな。行くとするか」
「お、おい! 持ち場を離れれば…」
「貴方も御一緒に、どうです?」
「……解った。付いて行こう」
ジーンの言葉に従い、門番の男2人が
茂みの方へと歩き出す。
彼女の額には淡い桃色の光が輝いていた。
「さぁ、これで皆さん通れますわ。
共に新たな世界へ旅立つとしましょう」
ジーンの言葉に、足を止められていたキャラバン達が
少しずつ外の世界へと流れ出していく。
勿論、ススム達一行も。
『ジーンさん…有難う……』
『ススム、又会いましょう』
擦れ違いざまに交わした視線で
確かにススムとジーンは言葉を伝え合った。
「…これだけの力が有りながら。
いつでも自分一人で抜け出せたであろうに」
「サナダさん……」
「解せんな、あの女…」
「悪い人じゃないですよ、サナダさん。
彼女はこの時を待っていたのかも知れない」
「この時?」
「俺にもよく解らないけど……」
「ススムの言う通りなのかも知れんな」
「オキタさん……」
「人の善意を素直に信じるとしよう。
それが後に、大きな【力】と変わるであろうからな」
「…はいっ!!」
空は青く、遠くまで伸びている。
その果てを目指すが如く、
ススム達の歩も勢いを増していった。 |