「頼まれてくれって…何を?」
「いや、実に簡単な事だよ。
俺を君達のキャラバンの一員に加えて欲しいんだ」
「ど、どうしてっ?!」
「一人旅だと色々と大変でね。
色んなキャラバンに声は掛けてるんだけど
なかなか応じてもらえなくてさ〜」
困った。
キャラバンに加えるかどうか等
ススムの一存で決められる訳も無い。
しかしこの男のノリには何故か逆らえずにいる。
このままでは…。
「どうした?」
「あ、サナダさん…」
「……」
サナダはナッシュの姿を確認すると
険しい表情を尚一層険しくさせた。
ナッシュの方は…と云えば、
先程と全く変わりが無い。
「サナダさん。実はこの人…」
「話は大体把握している」
「え?」
「ナッシュ…と云ったな。
キャラバンの長に会わせてやるから付いて来い」
「えっ?!」
「話が早くて助かるよ、お兄さん!」
「ちょ…ちょっと、サナダさんっ?!」
「大きな声を出すな、ススム」
大きな声を出して驚きたくもなる。
何処の誰だか判らない男をあのサナダが
事もあろうにオキタ村長に会わせる等
ススムには信じられない事で有った。
「まぁ、オキタさんなら…
余程の事が無い限りは
同伴を許可しそうだけどな」
* * * * * *
サナダがどうオキタに話を通したのかは判らない。
だが、その日からキャラバンには
新しい仲間としてナッシュが参加した。
「食い扶持が減るぜ…」
「まぁまぁ、サイトウの旦那! そんな事言わないで」
「お前って本当にノリが軽いよな」
その性格からか、ナッシュは直ぐに周りと打ち解けた。
相変わらずユキだけは警戒心を解かないままだが。
「なぁ、ナッシュ」
「ん? 何だい、ススム?」
「どうしてグラスランドに行きたいんだ?」
「どうしてって…世界をこの目で見る為さ」
「…社会見学? こんな時代に?」
「こんな時代だからこそ、必要なんじゃないの。
世界がどう変わっていくのか、それとも変わらないのか。
俺はこの目で見届けたいだけさ」
「ふぅ〜ん」
ナッシュは不思議な男で、
決してススムにキャラバンの行き先を尋ねなかった。
旅の目的を聞く事も無い。
それは既にオキタから聞いているからなのだろうか。
「正直、解らない事だらけだ」
「そんなものだよ」
「ダイスケも?」
「あぁ。ナッシュから殺気や敵対心は感じない。
だけど、彼は何かを隠している様な気がする」
「そうなんだ…」
「俺がそう思うってだけで、証拠は無いよ」
「うん……」
「明日はいよいよグラスランド入りだ。
順調ならな」
ダイスケはふと表情を引き締めた。
「とにかく、体力重視だ。
確りと休んでおこうぜ」
「あぁ」 |