[20] 非番

丁度その時だった。

「やっほー!」
この明るい声は、間違いない明子だ。

「兄貴居る?」
「居ますよ、ほら」
平尾がそそくさと応対するのが可笑しい。

「はい着替え。
 で、さっきは何の話してたの?」

耳が良いのか
明子は自然体で話に加わってくる。

「咲樹が明日非番なんだよ」
答えたのは鳩村である。

「へぇ〜、非番なんだ」
「でも予定が無いんだってさ」
今度は源田だ。

「それならさ〜」
明子は咲樹の右腕を取って言った。

「デートしない? 私と」
「えーっ?!」
驚いたのは男達である。

当の咲樹はニッコリと笑って
「アコちゃんとなら喜んで!」
と、嬉しそうだ。

「じゃあ明日11時。
 待ち合わせは〜」

嬉しそうにデートの段取りを決める2人を
唖然とした顔で見つめる鳩村・源田・平尾。
我関せずの大門・谷・松田。
可笑しいのを我慢しているのは北条だった。

* * * * * *

当日。

気持ちの良い位晴天が眩しい。

咲樹は珍しくワンピースを着て
お洒落に決め込んだ。
時間よりやや早めに待ち合わせ場所に到着し、
明子が来るのを待っている。

久しぶりに心が躍る。
こんなにドキドキするのは
一体何時以来だろうか。

ふと、もし明子じゃなく
別の人間が相手だったらと
思わぬ発想をしそうになり
咲樹は何度か頭を振った。

「待ったぁ〜?」
明子は時間通りにやってきた。

「私もさっき来た所」
「あ、可愛い格好!
 咲樹ちゃんてスカート似合うのね」
「本当? お世辞でも嬉しいなぁ〜」
「お世辞なんて言わないわよ。
 じゃあ何処行こうか?」

2人は本当に楽しそうに
お喋りをしながら歩き始める。

その後ろ姿を数人の影が
尾行しているとも気付かずに。

* * * * * *

「尾行?」
松田が素っ頓狂な声を上げたのは
前日の晩だった。

「そっ!」
鳩村が力強く返事をする。

その日は谷が宿直だった事もあり
若者共はCORNER LOUNGEで秘密会合を開いていた。

「だってさぁ、気にならない?
 咲樹ちゃんがどんな格好してくるか」
「俺はアコちゃんの方が気になる…」
「ゲンちゃんはそうだけどね」

酒を飲みながら各々意見を出し合うが
結局は2人のデートを
コッソリ覗き見たいだけなのだ。

「俺パス」
「あ、俺も辞退します」

松田と北条は声を揃えて辞退を宣言する。
しかしそれで大人しくなる鳩村以下2人じゃない。

「じゃあ多数決な!」
問答無用で松田と北条は
ピーピング集団に組み込まれてしまった。

「冗談じゃないよ、全く…」
呆れ顔で酒を呷る松田。

北条は何とも複雑な思いで
水割りを眺めていた。

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SITE UP・2009.6.8 ©森本 樹

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