| [20] 非番 |
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丁度その時だった。 「やっほー!」 この明るい声は、間違いない明子だ。 「兄貴居る?」 「居ますよ、ほら」 平尾がそそくさと応対するのが可笑しい。 「はい着替え。 で、さっきは何の話してたの?」 耳が良いのか 明子は自然体で話に加わってくる。 「咲樹が明日非番なんだよ」 答えたのは鳩村である。 「へぇ〜、非番なんだ」 「でも予定が無いんだってさ」 今度は源田だ。 「それならさ〜」 明子は咲樹の右腕を取って言った。 「デートしない? 私と」 「えーっ?!」 驚いたのは男達である。 当の咲樹はニッコリと笑って 「アコちゃんとなら喜んで!」 と、嬉しそうだ。 「じゃあ明日11時。 待ち合わせは〜」 嬉しそうにデートの段取りを決める2人を 唖然とした顔で見つめる鳩村・源田・平尾。 我関せずの大門・谷・松田。 可笑しいのを我慢しているのは北条だった。 当日。 気持ちの良い位晴天が眩しい。 咲樹は珍しくワンピースを着て お洒落に決め込んだ。 時間よりやや早めに待ち合わせ場所に到着し、 明子が来るのを待っている。 久しぶりに心が躍る。 こんなにドキドキするのは 一体何時以来だろうか。 ふと、もし明子じゃなく 別の人間が相手だったらと 思わぬ発想をしそうになり 咲樹は何度か頭を振った。 「待ったぁ〜?」 明子は時間通りにやってきた。 「私もさっき来た所」 「あ、可愛い格好! 咲樹ちゃんてスカート似合うのね」 「本当? お世辞でも嬉しいなぁ〜」 「お世辞なんて言わないわよ。 じゃあ何処行こうか?」 2人は本当に楽しそうに お喋りをしながら歩き始める。 その後ろ姿を数人の影が 尾行しているとも気付かずに。 「尾行?」 松田が素っ頓狂な声を上げたのは 前日の晩だった。 「そっ!」 鳩村が力強く返事をする。 その日は谷が宿直だった事もあり 若者共はCORNER LOUNGEで秘密会合を開いていた。 「だってさぁ、気にならない? 咲樹ちゃんがどんな格好してくるか」 「俺はアコちゃんの方が気になる…」 「ゲンちゃんはそうだけどね」 酒を飲みながら各々意見を出し合うが 結局は2人のデートを コッソリ覗き見たいだけなのだ。 「俺パス」 「あ、俺も辞退します」 松田と北条は声を揃えて辞退を宣言する。 しかしそれで大人しくなる鳩村以下2人じゃない。 「じゃあ多数決な!」 問答無用で松田と北条は ピーピング集団に組み込まれてしまった。 「冗談じゃないよ、全く…」 呆れ顔で酒を呷る松田。 北条は何とも複雑な思いで 水割りを眺めていた。 |