[19] ライバル

優しい朝日が部屋に差し込んでくる。
咲樹はその朝日を浴びて目を覚ました。

「ジョー…」
彼の存在が其処に無いのを感じ、
咲樹はふと寂しさを噛み締めた。

昨晩の事を
彼はどう思っているのだろうか。
まるで夢の中にいるように感じていたのは
自分だけだったのかも知れない。

そう思いながらテーブルに目をやると
其処には一枚のメモ用紙が置かれていた。

『署に戻る。
 無理はするな。 北条』

「ジョー、これ…」
彼らしい元気溢れる文字。
それを見て涙が溢れてきた。

「夢じゃなかったんだ…」
抱き締められた感触が、暖かさが蘇ってくる。

「ありがとう…ジョー…」

素朴な優しさ。
父親に似た部分。
彼女が惹かれた部分。

改めて咲樹は北条の事を想っていた。
父によく似た男性として。
そして、それとは別の男性として。

* * * * * *

「おはよう御座います」
咲樹は定時に顔を出した。
努めて自然に。

「おはよう。もう大丈夫?」
心配そうな平尾の声に笑顔で答える。
その笑顔は全員に対しての答えでもあった。

「御心配、お掛けしました」
「いやいや、元気になったのならそれで良いさ」
谷はニコニコしながら
咲樹の肩を軽く叩いた。

彼女なら自力で持ち直してくれる筈。
そう信じていたからこその谷の言葉。
咲樹は静かに頷いている。

遠目から北条が、そして鳩村が咲樹を見つめる。
お互いに声は掛けにくそうにしているが
表情は明るかった。

「良かったな、元気になって」
松田はそっと2人に近付き、
そう言って笑って見せた。

「ん? 何かあったのか?」
源田が松田達の側に近付いてくるが
3人は素知らぬフリを決め込んだ。

「何だよ、お前等〜?」
源田は鳩村に抱きつき、
鳩村は軽いパンチで応戦する。
それを見て笑う刑事達。

明るさが刑事部屋に広がっていく。
穏やかな時間が静かに流れていった。

* * * * * *

「咲樹、明日は非番だな」
鳩村に言われ、初めて咲樹はカレンダーを見る。
其処にはしっかり『非番』と書かれていた。

「西部署に来て初めての非番かぁ〜」
「何か予定は?」
「う〜ん…」

非番など想定もしていなかった為、
当然の事ながら予定等無い。

「色っぽい予定も無しか?」
「…何?」
「デート、とか」

冗談めいた言い方だが
鳩村の目は何処か真剣だった。
それが少し恐くも感じる咲樹。

「…有れば、言ってるわよ」
「それもそうだな」

少し離れた場所で北条が耳を立てている。
心配そうな表情を浮かべながら。
彼も鈍感な方ながらも
鳩村が咲樹を気に入っている事には気付いている。

ウカウカしてると取られかねない。
そんな予感すら抱いていた。

「…ライバル、か」
思わず彼の口から溜息が漏れた。

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SITE UP・2009.5.25 ©森本 樹

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