| [19] ライバル |
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優しい朝日が部屋に差し込んでくる。 咲樹はその朝日を浴びて目を覚ました。 「ジョー…」 彼の存在が其処に無いのを感じ、 咲樹はふと寂しさを噛み締めた。 昨晩の事を 彼はどう思っているのだろうか。 まるで夢の中にいるように感じていたのは 自分だけだったのかも知れない。 そう思いながらテーブルに目をやると 其処には一枚のメモ用紙が置かれていた。 『署に戻る。 無理はするな。 北条』 「ジョー、これ…」 彼らしい元気溢れる文字。 それを見て涙が溢れてきた。 「夢じゃなかったんだ…」 抱き締められた感触が、暖かさが蘇ってくる。 「ありがとう…ジョー…」 素朴な優しさ。 父親に似た部分。 彼女が惹かれた部分。 改めて咲樹は北条の事を想っていた。 父によく似た男性として。 そして、それとは別の男性として。 「おはよう御座います」 咲樹は定時に顔を出した。 努めて自然に。 「おはよう。もう大丈夫?」 心配そうな平尾の声に笑顔で答える。 その笑顔は全員に対しての答えでもあった。 「御心配、お掛けしました」 「いやいや、元気になったのならそれで良いさ」 谷はニコニコしながら 咲樹の肩を軽く叩いた。 彼女なら自力で持ち直してくれる筈。 そう信じていたからこその谷の言葉。 咲樹は静かに頷いている。 遠目から北条が、そして鳩村が咲樹を見つめる。 お互いに声は掛けにくそうにしているが 表情は明るかった。 「良かったな、元気になって」 松田はそっと2人に近付き、 そう言って笑って見せた。 「ん? 何かあったのか?」 源田が松田達の側に近付いてくるが 3人は素知らぬフリを決め込んだ。 「何だよ、お前等〜?」 源田は鳩村に抱きつき、 鳩村は軽いパンチで応戦する。 それを見て笑う刑事達。 明るさが刑事部屋に広がっていく。 穏やかな時間が静かに流れていった。 「咲樹、明日は非番だな」 鳩村に言われ、初めて咲樹はカレンダーを見る。 其処にはしっかり『非番』と書かれていた。 「西部署に来て初めての非番かぁ〜」 「何か予定は?」 「う〜ん…」 非番など想定もしていなかった為、 当然の事ながら予定等無い。 「色っぽい予定も無しか?」 「…何?」 「デート、とか」 冗談めいた言い方だが 鳩村の目は何処か真剣だった。 それが少し恐くも感じる咲樹。 「…有れば、言ってるわよ」 「それもそうだな」 少し離れた場所で北条が耳を立てている。 心配そうな表情を浮かべながら。 彼も鈍感な方ながらも 鳩村が咲樹を気に入っている事には気付いている。 ウカウカしてると取られかねない。 そんな予感すら抱いていた。 「…ライバル、か」 思わず彼の口から溜息が漏れた。 |