| [13] 恋愛論・1 |
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「チンピラの自殺騒ぎが とんだドンデン返しでしたね」 珈琲を注ぎながら 思わず平尾が漏らした。 「まぁジュンも惚れた女の為に必死だったんだ。 その辺は大目に見てやれや」 珈琲を受け取り 松田はチンピラであるジュンを擁護した。 「惚れた女の為に…ねぇ」 鳩村は煙草を吹かしながら続けた。 「悪くねぇな、そう言う生き方も。 なぁ、ジョー?」 不意に話を向けられ 北条は思わず息を呑んだ。 「どうした…?」 様子がおかしいと気付き、 鳩村が話し掛けて来る。 「いえ…一寸考え事を……」 「お前の脳味噌で考え事か? 無理無理。容量が少ないんだから」 「それはお前だろう、ゲン?」 松田が吹き出す。 「ひっでぇ〜! それは無いよなぁ、咲樹?」 「えぇ。ゲンちゃんって 結構頑張り屋さんだもんね」 「頑張ってるだけなら… 始末書の量ももう少し減るだろうに」 今度は谷が溢す。 「…善処します」 「あぁ、そうしてくれんと困る。 ワシも大さんも、課長も… それから係長もな」 付け足すように『係長』。 谷も随分と意地が悪い。 大門は自分の席で皆の談笑を笑顔で聞いている。 和やかな雰囲気だった。 当初心配していた北条の反抗も すっかり形を潜めている。 敢えて言うなら 以前よりも静かになった感じだ。 「なぁ、咲樹なら 惚れるのと惚れられるの… どっちがお望みだ?」 鳩村の問い掛けに対し、 咲樹は真剣に悩み出した。 「おいおい、何も其処まで悩まなくても…」 「だって…相手にも選ぶ権利は発生するのよ?」 「それはそうだが…」 「この手の話って昔から本当苦手なのよね」 「だから色気が無いんだ、姫は」 「そんな事無いですってリキさ〜ん」 「ほぅ? 彼女の相手に立候補か、一兵?」 「だって…」 一拍置いてから。 「守って貰えるじゃないですか」 一同大爆笑。 「逆だ逆! お前が騎士様宜しくで 行かねぇでどうする?」 「ゲンちゃんは良いよ。 でも僕じゃねぇ〜」 自分を解っている所為か 平尾は妙に受け身である。 そんな会話にも乗ってこないのが約1名。 言わずと知れた北条だ。 咲樹よりも色恋沙汰は苦手らしく 態と顔を背け、 話を聞かないようにすらしている。 「ジョー?」 不意に鳩村から声を掛けられ 大きく肩をビクンと揺らす。 「お前、どうなんだ? 惚れた女か惚れられた女か、 ドッチ選ぶ?」 「お…俺は……」 俯き加減でボソッと。 「惚れた女…」 「聞こえないんだけど」 「…何でもないです。 判りませんよ、そんなの」 「…ガキ」 一瞬カチンと来たが 口でも手でも鳩村には敵わない。 無理に喧嘩を売る必要は無いと 大人しくする事にした。 |