| [15] Trauma・1 |
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撃たれた北条はひとまず病院へ行く事になった。 自分に抱きつき、「お父さん」と呼び続け 気を失った咲樹の事が非常に気に掛る。 自分の治療そっちのけで 直ぐにでも署に向かいたい。 そんな気持ちにさえ、させた。 あんな弱い彼女を見たのは初めてだったし、 何よりも気になったのはその言葉だった。 「お父さん…?」 自分よりも年下の男に対して使う言葉ではない。 だが彼女は明らかに自分を見てそう叫んでいた。 「…済みません、俺やっぱ署に……」 「まだ手当済んでないでしょう!」 医者に怒られ、 渋々北条は染みる薬と格闘する事となった。 「只今戻りました」 漸く解放され、署に戻るが 其処に咲樹の姿は無かった。 「…咲樹さんは?」 「お前を搬送した後、倒れた。 今、一兵が看てる…」 答えたのは鳩村だった。 沈痛な面持ちで言葉を繋げる。 「何が遭ったって言うんだ?」 「団長、何か御存知なんでしょ?」 「教えて下さいよ、団長」 松田が、源田がにじり寄るが 大門は首を横に振った。 「この件に関しては 咲樹自身の口から話すだろう。 自分は公言出来ん」 「団長!」 鳩村が苛立ち紛れに叫ぶ。 「彼女が話したくなった時に聞いてやれ。 自分にはそれしか言えん」 大門の一言は絶対だ。 鳩村は納得出来ないながらも口を閉ざした。 「……」 彼女の顔に赤みが差してきた事もあり、 平尾は漸く安堵の溜息を吐いた。 「本当、驚いちゃったよ…」 小声でそっと呟く。 「僕よりも強いって思ってたけど 君は君で心に大きな傷を抱いてる。 それを今迄懸命に隠していたんだね…」 何処かで彼女を誤解していた。 こうしてみれば年相応の女性なのだ。 脆く、傷付き易い。 「…これからは無理しないで……」 平尾は聞こえない願いをそっと口にした。 「僕達、仲間だもん」 トントン ノックが聞こえる。 静かに戸を開くと北条が立っていた。 「どうですか、一兵さん?」 「ジョーか。今眠った所」 「…そうっすか」 「じゃあ役目交替。 傍に付いててあげなよ」 「俺が…?」 「その方が彼女、安心するんじゃない? 団長には僕から報告しておく。 彼女が目を覚ましたら 一度家に戻った方が良いと思うし」 「…そうっすね」 「じゃあ、頼んだよ。ジョー」 静かに平尾はその場を後にした。 「う…うん……」 咲樹がやがてゆっくりと目を覚ます。 「…ジョー?」 「あぁ…」 咲樹は何が起こったのかを 懸命に思い出そうとしている。 「無理しなくても良い」 体を起こそうとする彼女を 北条は優しく抱き寄せた。 「あ…」 咲樹の顔が真っ赤になる。 「もう少し休んでろよ」 「そうはいかないわよ」 「だからって無理は…」 ガラッ 不意に誰かが入ってくる。 松田だった。 「お、御邪魔したかな?」 「リキさん…」 「……」 慣れない事をしたのを また気拙い人に見られ 完全に北条は固まってしまっている。 「団長からの通達。 姫は自宅に戻れってさ。 ジョー、送って行ってやれ」 「は…はい」 北条はその状態で何とか返答する。 「リキさん、私…」 「疲れてるんだよ、姫は。 少し休んだ方が良い」 松田の申し出に漸く咲樹は頷いた。 |