[22] デート終了

喫茶店で二人は談笑を続けていた。

年頃の女の子らしい
他愛もない話。

時間がゆっくりと進んでいく。
穏やかに。

「でね…兄貴ったら…」
「うん。それで?」

親友同士の会話のそれと同じ印象を受けた。
咲樹は明子を、
そして明子は咲樹を、
お互いにお互いを尊重し合っているのが判る。

「良いモンだね、女の友情も」
「…そうっすね」

松田の呟きに
北条も呟きで返した。

あの笑顔はきっと自分では引き出せないだろう。
明子だからこそ見せられる無防備な笑顔。

「いつか…」
自分だけにも見せて欲しい。
そう心の中で呟く自分が居た。

* * * * * *

「あぁ〜、もうこんな時間!」
明子は口惜しそうに時計を眺める。

「あっという間だったね」
「本当。でも…またデートしようね!」
「私で良かったら何時でも!」

「でもさぁ…」
明子は悪戯っぽく微笑む。
「咲樹ちゃんに彼氏が出来たら
 どうなるか判らないかも…」
「か…彼氏?」

瞬間、北条の横顔が頭を過ぎる。
慌てて頭を振り、映像を掻き消す咲樹。

「どうしたの?」
「な…何でもないよ。うん…」
顔を真っ赤にしながらしどろもどろで答える咲樹。

「ふ〜ん、居るんだ。好きな人」
敏感な明子が気付かない訳は無い。
「誰? 兄貴には黙っておくからさ」
「えっと…」
咲樹は素直に明子に耳打ちする。
「…ジョー」
「えっ? そ、そうなんだ…」
聞いた明子もつられて赤面。
「誰にも言わないでね…」
「う…うん。それは勿論。
 で、告白は…?」
「…向こうから、してくれたの」
「じゃあ両想い? 素敵…」
「…だったら良いんだけどね」

少し淋しそうに微笑む咲樹。
「どうしたの? 嬉しくないの?」
「嬉しいんだけど、どう言って良いのか解らなくて」
「成程ね…」

明子は腕組みをし、何かを考えている様だったが
ポンと手を叩いて笑みを浮かべる。

「力になるわよ、私も!」
「本当? 有り難う、アコちゃん」
「友達だもん。当たり前でしょ?」
「アコちゃん…」
「頑張ってね!」
「うん」

二人は嬉しそうに握手を交わす。
その笑顔を優しく夕日が照らしていた。

* * * * * *

「何やら話が終わった様だな」
源田が様子を覗き見ている。

結局男達は最後まで
尾行、張り込みを止めなかった様だ。

「ん…あれ?」
二人の様子がおかしいのに気付く平尾。
此方に真っ直ぐ向かってくる。

「バレた?」
「まさか…」

慌てる鳩村と松田。

「何してるの?」
咲樹の声に思わず萎縮する男達。

「…いや、その……」
「尾行ゴッコ?」
明子の問い掛けに源田は苦笑いを浮かべる。

「主犯は?」
「……」
一斉に全員が鳩村を見つめる。
「ハト…」

呆れ笑いの咲樹と明子。

「全く…事件が無かったから良かったものの…」
「兄貴に報告するわよ、今度こんな真似したら」
「そ、それだけはご勘弁!!」
源田の懇願に全員が大笑いした。

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SITE UP・2005.02.20 ©森本 樹

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