| [11] 仲間達 |
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[23] 緊急帰国 |
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松田の自宅に電話が掛かってきたのは その日の晩だった。 「はい、松田で…」 「ボンジュール、リキさん!」 「お前…リュウ? リュウかっ?!」 「ピンポーン。大当たり! 今 日本に居るんだ」 「何で…? 休暇か?」 「だったら素敵なんだけどね。 仕事絡みさ」 「西部署に持ち込んでくれるなよ」 「そのつもり…だけど、そうも行かないんだ」 「どう云う意味だ?」 「ペイ絡みの事件なんだ。 組織が近々日本でブツを捌くって連絡が入ってね…」 「成程…。ま、頭には入れとくぜ」 「そん時は宜しく。また西部署に顔出すよ」 「あぁ。皆 喜ぶ」 「じゃあ」 桐生の電話は其処で途切れた。 松田はハイライトを咥え ゆっくりと煙を吸う。 「ブツ…ねぇ。 こっちに絡んでこなきゃ良いが…」 月明かりの照らされたアスファルトに目をやり 松田は溜息を吐いた。 次の日。 「おはよう御座います」 咲樹はいつもの様に署に顔を出した。 いつもと変わらない雰囲気。 事件もまだ起こっていない様だ。 「よう!」 昨日の事は何処へやら。 鳩村が笑顔で近付いて来る。 「おはよう、ハト」 「御機嫌麗しいですかな、姫?」 「まぁまぁ…かな?」 鳩村は苦笑を浮かべている。 「昨日の事は…その…」 「さぁ、何の事かしらね?」 咲樹は笑顔ではぐらかすと、 そのまま自分の席に向かう。 鳩村も鼻の頭を掻きながらそれに習った。 「さて…仕事、仕事…とっ!」 やがて松田が、源田が、平尾が、そして北条がやって来る。 罰の悪そうな顔を浮かべながら。 それを盗み見て、咲樹は笑っていた。 大門が顔出せば全員が揃う。 そんな時。 廊下から何やら賑やかな声が聞こえてきた。 ビクンと肩を強張らせたのは咲樹だ。 聞き覚えのある声なのか。 「この声…まさか…」 彼女は表情まで強張らせている。 嫌な予感が過ぎり、彼女は頭を抱え込んだ。 「咲樹!」 刑事部屋に中年女性が飛び込んで来る。 「もう…どうして此処迄……」 「いい加減に見合い話、聞いてくれても良いでしょ?」 「見合いっ?!」 刑事部屋の全員が一斉に声を上げる。 「そんな気は無いって、いつも言ってるでしょ? しつこいわよ、母さん!」 「母さん…?」 今度は北条と鳩村が声を揃えた。 余りの息のピッタリぶりに不気味さを覚える二人。 「あら、初めまして。 私、沢渡 明美と申します」 咲樹の母、明美は深々と会釈をした。 刑事達も同じく会釈を返す。 「で、それを言う為に態々…?」 嫌味っぽく咲樹が愚痴る。 「挨拶に伺ったのよ」 「本当に?」 「あら、親まで疑う気かい?」 「そう云う職業だから」 「やっぱり刑事になんかさせるんじゃなかったわ…」 改めて明美は溜息を吐いた。 そして何を思ったのか、 彼女は突然刑事達を見つめ始める。 「ふぅ〜ん、『仕事に夢中』…ねぇ」 「な…何よっ?!」 母親の勘と云う奴か。 明美は北条と鳩村に向かって微笑みかける。 「不束な娘ですけど、面倒見てやって下さいね」 「母さんっ!!」 赤面して怒る咲樹。 言われた側の二人は顔を見合わせ、 唖然として立ち尽くしていた。 「さて…」 桐生はその頃、聞き込みを開始していた。 「西部署の世話になりそうな事件(ヤマ)だな。 全く…」 フランスから帰国したのはいいが ヤマに関しては、ガセ半分 本気半分の状態で 正直困っている。 「素直に協力を要請した方が賢いかな?」 桐生の足は自然と西部署に向かっていた。 「久々の合同捜査。 ドジは踏めんよ、桐生君?」 軽く自分自身におどけて見せ、 彼は雑踏を後にした。 |