[11] 仲間達

[23] 緊急帰国

松田の自宅に電話が掛かってきたのは
その日の晩だった。

「はい、松田で…」
「ボンジュール、リキさん!」
「お前…リュウ? リュウかっ?!」
「ピンポーン。大当たり!
 今 日本に居るんだ」
「何で…? 休暇か?」
「だったら素敵なんだけどね。
 仕事絡みさ」
「西部署に持ち込んでくれるなよ」
「そのつもり…だけど、そうも行かないんだ」
「どう云う意味だ?」
「ペイ絡みの事件なんだ。
 組織が近々日本でブツを捌くって連絡が入ってね…」
「成程…。ま、頭には入れとくぜ」
「そん時は宜しく。また西部署に顔出すよ」
「あぁ。皆 喜ぶ」
「じゃあ」

桐生の電話は其処で途切れた。
松田はハイライトを咥え
ゆっくりと煙を吸う。
「ブツ…ねぇ。
 こっちに絡んでこなきゃ良いが…」

月明かりの照らされたアスファルトに目をやり
松田は溜息を吐いた。

* * * * * *

次の日。

「おはよう御座います」

咲樹はいつもの様に署に顔を出した。
いつもと変わらない雰囲気。
事件もまだ起こっていない様だ。

「よう!」

昨日の事は何処へやら。
鳩村が笑顔で近付いて来る。

「おはよう、ハト」
「御機嫌麗しいですかな、姫?」
「まぁまぁ…かな?」

鳩村は苦笑を浮かべている。

「昨日の事は…その…」
「さぁ、何の事かしらね?」

咲樹は笑顔ではぐらかすと、
そのまま自分の席に向かう。
鳩村も鼻の頭を掻きながらそれに習った。

「さて…仕事、仕事…とっ!」

やがて松田が、源田が、平尾が、そして北条がやって来る。
罰の悪そうな顔を浮かべながら。
それを盗み見て、咲樹は笑っていた。

* * * * * *


大門が顔出せば全員が揃う。
そんな時。

廊下から何やら賑やかな声が聞こえてきた。
ビクンと肩を強張らせたのは咲樹だ。
聞き覚えのある声なのか。

「この声…まさか…」

彼女は表情まで強張らせている。
嫌な予感が過ぎり、彼女は頭を抱え込んだ。

「咲樹!」

刑事部屋に中年女性が飛び込んで来る。

「もう…どうして此処迄……」
「いい加減に見合い話、聞いてくれても良いでしょ?」
「見合いっ?!」

刑事部屋の全員が一斉に声を上げる。

「そんな気は無いって、いつも言ってるでしょ?
 しつこいわよ、母さん!」
「母さん…?」

今度は北条と鳩村が声を揃えた。
余りの息のピッタリぶりに不気味さを覚える二人。

「あら、初めまして。
 私、沢渡 明美と申します」

咲樹の母、明美は深々と会釈をした。
刑事達も同じく会釈を返す。

「で、それを言う為に態々…?」

嫌味っぽく咲樹が愚痴る。

「挨拶に伺ったのよ」
「本当に?」
「あら、親まで疑う気かい?」
「そう云う職業だから」
「やっぱり刑事になんかさせるんじゃなかったわ…」

改めて明美は溜息を吐いた。
そして何を思ったのか、
彼女は突然刑事達を見つめ始める。

「ふぅ〜ん、『仕事に夢中』…ねぇ」
「な…何よっ?!」

母親の勘と云う奴か。
明美は北条と鳩村に向かって微笑みかける。

「不束な娘ですけど、面倒見てやって下さいね」
「母さんっ!!」

赤面して怒る咲樹。
言われた側の二人は顔を見合わせ、
唖然として立ち尽くしていた。

* * * * * *

「さて…」

桐生はその頃、聞き込みを開始していた。

「西部署の世話になりそうな事件(ヤマ)だな。
 全く…」

フランスから帰国したのはいいが
ヤマに関しては、ガセ半分 本気半分の状態で
正直困っている。

「素直に協力を要請した方が賢いかな?」

桐生の足は自然と西部署に向かっていた。

「久々の合同捜査。
 ドジは踏めんよ、桐生君?」

軽く自分自身におどけて見せ、
彼は雑踏を後にした。

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SITE UP・2005.03.01 ©森本 樹

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