[26] 罠・2

手錠で繋がれた両手を天井から吊るされ、
北条はサンドバック状態だった。

それでも呻き声一つあげない。
意地でもあった。
全て相手の思う通りに等なりたくない。

懸命に痛みを堪え、
相手を睨み付ける。

「つまらんな、叫び声一つ上げない様じゃ」

男の一人が徐に取り出した拳銃を
咲樹と少女に向ける。
北条の形相が変わった。

「こいつ等撃たれたくなかったら
 悲鳴の一つでも上げてみろや」

再び鉄パイプの衝撃が腹部を襲う。

「ぐはっ!」
我慢していた物が急き立てる様に壊れていく。
一度吐き出した呻き声はもう防げない。

苦痛の叫びを上げ続ける北条を目にし、
咲樹は少女をグッと抱き締めた。

「…何が狙いなの?」

気丈な言葉だが、
声は震えていた。
無理も無い。
目の前の残状を見れば。

「取引だよ。
 精々利用させて貰うぜ。
 西部署の刑事さん達よ」

咲樹は愕然とした。
自分達の正体を知っている。
これは罠だと直感した。
だが、大門達に伝える術が無い。

『落ち着いて考えるのよ。
 きっと突破口がある筈…』

少女を抱き締めながら
咲樹は懸命に冷静さを取り戻そうとしていた。

* * * * * *

「連絡が取れない?」
大門は無線でその事を知った。

「はい。ジョーの黒パトは見つかったんですが
 姫と共に姿を消してます」
「目撃者は?」
「ありません」
「…」
「団長?」
「リキ、お前はジョーと咲樹を探してくれ。
 他の皆は引き続き聞き込みだ」

無線で的確に指示を飛ばす大門。
嫌な予感が胸を過ぎる。

「取引と、関係が有るのか?
 あの二人が何の連絡も無く姿を消す筈が無い」

大門はそう呟くと煙草を銜えた。

* * * * * *

「ぐぁーーーっ!!」
何度かの絶叫の後、
北条は激しく痙攣を起こした。

「ジョーッ!!」
咲樹の叫びが部屋中に響く。
その声に答える様子は無い。
静かに時間だけが過ぎていく。

「…」
男の一人が強引に髪を掴み、
北条の表情を確認した。
「気絶しやがったか」

その言葉に一瞬だが胸を撫で下ろす咲樹。
地獄のような時間は
漸く終焉を迎えたかに見えた。

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SITE UP・2005.03.25 ©森本 樹

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