[31] 思惑

「どうだ、気分は?」
男に声を掛けられ、
北条はゆっくりと目を覚ました。

「此処…は…?」
「忘れたのかい?」
「……」
ゆっくりと記憶を巡らす。

「あ…」
徐に腕を見つめる。

注射痕。
「ペイ…」

「思い出したか」
溜息を漏らし、北条は男を見つめた。

「何故俺を生かした?」
「お前に働いて貰う為さ」
「働く?」
「そうだ。こっちに来な」
腕を掴まれ、強引に立たされる。
フラフラとした足取りで
男達が座るテーブルに着くと
無理やりイスに座らされた。

テーブルには何処かの地図。

「…何の、相談だよ?」
「積極的じゃないか」
「…どうせ逆らえないんだろ?」
「物分かりが良いな」
北条は弱々しいながらも男達を睨みつける。

「金塊強盗だよ」
「金塊?」
「5億相当の金塊だ。
 コイツを戴く」
「5億…」
「身代金の1億は手に入った」
北条の中で何か辻褄が合わなかった。

ヘロインの末端価格は30億だと聞いた。
6億相当で取引するという事か。
それとも…。

「6億を手に入れて…どうするつもりだ?」
「その先は知る必要ないよ
 刑事さん…」
北条の顎を掴み、男の一人が微笑む。

「生憎金塊は西部署の所轄内でね。
 上手く振り切ってくれよ」
「…解った」
北条は黙って瞳を閉じた。
心の中で済まないと皆に詫びつつ。

* * * * * *

咲樹は仮眠室でなかなか寝付けずに居た。
体は疲れ切っている筈なのに
北条の事が気になって仕方が無い。
「ジョー…」
そっと呟いてみる。
思わず涙が零れた。

「肝心な時、いつも役に立たない。
 あの時も…」
昔を思い出し、涙が更に溢れ出す。
「御免ね、ジョー…」
最後の微笑を見ていなかったからか、
咲樹には北条の苦しんでいる表情しか
脳裏に浮かんでこなかった。

胸が苦しい。

「咲樹?」
心配して来たのか、
源田が仮眠室のドアを叩いた。

「…寝てるか?」
「起きてるわ」
「じゃあ一寸良いか?」
「えぇ」
源田は恐る恐る仮眠室に入って来た。
心なしか緊張しているようだ。

「リキが前科者を当たってるんだが、
 候補が何人か絞られたみたいだ」
「本当?」
「あぁ。出来れば咲樹に
 照合してもらいたいんだが」
「行くわ!」
ベッドを飛び出し、
咲樹は松田の居る小会議室へ向かった。

「おい、咲樹!」
源田は置いてきぼりを食らってしまう。
仕方なくベッドを直し、
後を追った。

気持ちはよく解る。
だからこそ早く解決したい。
早く、仲間を助け出したい。
それは源田も同じ気持ちだったからこそ。

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SITE UP・2005.04.15 ©森本 樹

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