[32]

「どうだ?」
松田の上げたリストの中に
咲樹の目が止まった。
「この男…」
「ビンゴか」
「えぇ。中に居たわ」

「室井 進。
 前科5犯。つい1週間前に出所か…」
「出所して直ぐに犯行とは、
 反省の無い奴だな」
源田は思わず溜息を吐く。

「よし。団長には俺から報告する。
 姫はもう少し寝てろ」
「えっ? 大丈夫よ…」
「眠れて無いのは知ってる。
 何なら、添い寝してやろうか?」
悪戯っぽく微笑む松田に対し、
咲樹は慌てて首を横に振る。
「け、結構です!!」
「じゃあ今度呼ぶ迄仮眠するように」
「…ありがと、リキさん。ゲンちゃん」
咲樹は素直に仮眠室へ向かった。

正直、疲労はかなり辛い。
犯人の目星が付いた事で
安堵感が疲労を蘇らせたのだ。

「咲樹の奴、無理しちゃって」
「それだけ心配なんだよ。
 ジョーの事がさ」
「…妬けるねぇ」
「まぁな…」

前科者カードで源田の額を軽く叩き、
松田は立ち上がった。

「こいつの交友関係、洗うぜ」
「おぅ!」
二人は大門の居る刑事部屋へと急いだ。

* * * * * *

新たにヘロインを注入され、
北条は黙ったままハンドルを握っていた。

今頃は銀行内で派手にやらかしているのだろう。
その手伝いを、現職警官の自分がしている。
堪らなく苦しい時間が過ぎていく。
しかし…どうする事も出来ない。
大人しく待つしかない。

やがて程無くして男達が帰って来た。
勿論、5億相当の土産と共に。

「良し、出せ!」
言われるままに北条はエンジンを掛け、
トラックを走らせた。

銀行から物凄いスピードを上げ
北条の運転するトラックは
目的地へと向かって走っていった。

* * * * * *

西部署に第一報が入ったのは
およそ10分後の事だった。

「強盗だよ、大門君!」
二宮が悲鳴の様な声を上げる。

「現場は○×銀行西部支店。
 何と5億もの金塊が奪われたんだそうだ!」
「ホシは?」
「覆面をした6人の男らしい。
 目撃者の証言によると
 トラックには顔色の悪い男が乗っていたそうだ。
 トラックのナンバーは…」
「解りました」
大門は素早く無線で指示を送り、
自分もM-Xへと向かった。

* * * * * *

「来たぜ…」
隣に乗る男が目ざとく鳩村のバイクを見付けた。
「後は頼んだよ、北条さん」
「…しっかり、掴まってろ」

それだけ言うと北条は
態とバイクにトラックを接触させようと
急ハンドルを切った。

勿論鳩村も危機を回避すべく
ハンドル操作でそれを避け、牽制に入る。

「…ジョー?」
その時にはっきりと見た。
トラックを運転している男の顔を。

青ざめた顔をしているが
間違いなく北条だった。

唇が微かに動く。

『邪魔シナイデクレ』

そう言って再びトラックを接近させる。

「ジョーッ!!」
理由は解らない。
だが、鳩村はそれ以上の追跡を諦めた。
諦めざるを得なかった。

彼の心の叫びを
確かに受け取ったからだ。

「ジョー、お前…」
何かを覚悟した様な表情が
鳩村の胸に去来する。

「団長…、鳩村です……」
鳩村は取り逃がした事だけを
大門に告げた。

[31]  web拍手 by FC2   [33]



SITE UP・2005.04.20 ©森本 樹

【書庫】目次