| [33] ターゲット |
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「室井 進…」 前科者カードを見た大門は思わず顔を顰めた。 「こいつは確か…」 「リュウが此処に居た頃に上げた奴ですね」 答えたのは松田だった。 「偶然にしては出来過ぎていませんか?」 「…リュウは?」 「今はおやっさんと共に 聞き込みに回っているところです」 「呼び戻そう。 嫌な予感がする」 「そうですね…」 そもそもこの事件は最初から不可解だった。 末端価格30億ものヘロインの行方。 攫われた北条の様子。 そして…桐生が過去に逮捕した室井が その集団に居たと云う事実。 一見矛盾だらけのこの事件が 実は一本の線で繋がれていたとしたら。 その本当の狙いは…。 「団長?」 松田の声に、大門はふと我を取り戻した。 「トラックの件はハトに詳しく聞こう」 「解りました。 それじゃ俺はゲンと…」 「あぁ。室井の身辺を洗ってくれ」 「行って来ます」 松田を見送りながら、 大門の脳裏に一本の線が浮かんでいた。 「実に上手くいったな」 金塊を手にしながら 男達は満足そうに笑っている。 冷ややかな目でそれを見つめながら 北条は黙って話を聞いていた。 この男達、確かにヘロインは持っている。 だが少量過ぎる。 取引には適さない。 それなのに何故此処まで金に執着するのか。 ぼんやりする頭を振りながら 何とか話を聞き漏らさないように 耳に集中力を傾ける。 「で、これからどうする?」 「あの話をエサに奴が来たまでは 順調だったんだがな…」 『奴…?』 「桐生…だったな」 「一筋縄ではいかんな。 どうやって息の根を止めるか。 海も向こうでもヤキモキしてるぜ」 『リュウさん…?』 あの話、と言うのも気になった。 ヘロイン密輸の事だろうか。 エサ、と云う事は… 取引は全くのデマなのかも知れない。 『リュウさんが…危ない…』 北条は何とか此処から脱出出来ないか 考えあぐねていた。 西部署に連絡を入れなければ。 桐生の命に関わる問題だ。 『何とか、突破口を…』 武器も何も無い、 このボロボロの状態で 果たしてそれが可能なのか。 いずれにしても時間が無い。 ヘロインが切れる迄に 何とか行動に移さないと。 北条はその隙を伺う事にした。 「トラックの運転手をジョーが?」 鳩村からの報告を聞き、 桐生が奇声を上げた。 「何で…?」 「知るか。とにかくアイツだった。 『邪魔しないでくれ』って メッセージ付きでな」 「ジョーの奴…」 「脅迫されてるんですかね、大さん?」 「ジョーの顔色が悪いって言ってたな、ハト」 「はい」 「ペイを打たれてますね、谷さん」 「そうですか。…そう云う事か」 「くそっ! ジョー…」 堪らずに桐生は机を蹴り上げた。 「今はまだ無事だと言う事だ。 だが…奴等が次にどんな手を使うか解らない。 ジョーの命の危険性もある。 急いで奴等の足取りを掴もう」 「はい!」 「リュウ、お前は残れ」 「えっ?」 「…念の為だ。 もう一度一緒に資料を見直そう」 「…解りました、団長」 桐生は意外と素直に応じた。 |