| [34] 攻防 |
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「おい、又運転手頼むぜ」 北条の朦朧とする意識に 誰かの声が飛び込んでくる。 そう、室井だった。 「何処へ…?」 「西部署だよ」 「せいぶ…しょ…?」 「桐生って刑事が居るだろ? 奴に借りを返さねぇとな…」 北条はふと我を取り戻した。 これはチャンスかもしれない。 上手く行けば桐生を救えるだろう。 「…解った」 「素直だな、坊や。 ご褒美をくれてやるぜ」 「うっ…」 再度注入されるヘロイン。 これが保つまでの時間で 決着を着けなければならない。 北条は心を新たに 彼等の策に従う素振りを見せた。 一方西部署。 落ち着かない桐生を横目に 大門は再度資料に目を通していた。 一見何の変哲も無い報告書。 だが何処かで 歯車が狂っている様な感じを受ける。 これが刑事の勘だ。 「リュウ」 「何ですか、団長…?」 「この新たな情報はパリで?」 「いえ、日本に帰国してからです。 情報屋経由で…」 「情報屋…」 「団長…?」 「いや、何でもない」 「あの…」 「どうした?」 「一寸、外の空気吸ってきても良いっすか?」 「…そうだな」 苦笑を浮かべ、大門は了承した。 「行って来ます」 桐生はニコッと微笑むと 刑事部屋を後にした。 桐生の姿を確認し、 室井はニヤリと笑みを浮かべた。 「借りを返してやる…」 胸元から取り出した拳銃。 それは自分のコルトローマンだった。 北条の目が拳銃の動きを捉える。 『必ず、守ってみせる…』 照準を合わせる室井。 そして狙われているのに気付かない桐生。 北条は思い切りアクセルを踏んだ。 そしてけたたましいクラクション。 「貴様ッ!」 室井は北条を止めようとするが 新たに打ったヘロインが誤算だった。 彼の体はすんなりと室井をかわし、 拳銃を奪い取る。 「?!」 クラクションに気付いた桐生が 北条の姿を黙認した。 「ジョー?」 慌てて後を追おうとしたが 車は遥か彼方に逃げた後だった。 ハンドルを出鱈目に動かし、 北条は何とか室井の攻撃を封じていた。 しかし余り西部署から離れると 情報を伝える術が無くなる。 彼は一か八かの賭けに出た。 車を工場の壁に激突させたのだ。 「グワーッ!!」 「くっ!」 室井は衝撃の余り動く事が出来ない。 その隙を伺い、 北条は何とか車から這い出した。 後は西部署に向かうだけ。 肩から流れる血に気付く事も無く 彼は来た道をトボトボと戻って行った。 痛みは感じなかった。 だが、果てしなく長い道のように感じた。 |