[35] 進言

フラフラとした足取りで
一人の男が西部署前に到着した。
一瞬、微笑んだかのように見えた。
男はそのまま何も言わず、
階段にへたり込む。

偶然玄関に出ていた鳩村がその男を発見した。

「ジョー!」

確かにそれは北条だった。
体に何箇所か流血痕がある。
逃げる時に負った怪我か。

「狙いは…リュウ、さん。
 暗殺…阻止…」
「リュウなんだな?!
 で、ヘロインは?」
「…全くの、デマ。
 奴等…密航…」

「場所は?」
「東京湾…第5埠頭…。
 時間…11時……」
「暗殺未遂でトンズラか…」
「はやく…」
「解った!」

鳩村は北条を抱き上げると
そのまま刑事部屋へと向かって走って行った。

* * * * * *

「ジョー…」
仮眠室で眠る北条の様子を見て
咲樹は愕然とした。
想像以上の酷い有様に
顔を背けたくなる。

「時間は11時。
 何としても阻止するぞ」
「はい」

「咲樹」
「はい、団長」
「お前はジョーを頼む」
「…え?」
大門はそう言うと
北条の両手をベッドの柵に固定し、
猿轡を填めさせた。

「ペイが切れた時
 禁断症状で暴れるだろう。
 看てやってくれ」
「…解りました」

本当ならこの手で犯人を逮捕したい。
殴り飛ばしてやりたい。
いや、撃ってやりたい位だ。

だが、大門には解っていたのだろう。
刑事に有るまじき憎しみの心が
彼女に芽生えていた事を。

「行くぞ…」
次々と仮眠室を後にする仲間達。
最後に部屋を出る鳩村は
そっと咲樹の頬にキスを送った。

「?!」
「仇、取って来てやる。
 ジョーを頼む」
咲樹は頬を押さえ、小さく頷いた。

* * * * * *

「俺も行きますよ」
桐生は愛用の銃を片手に
大門に直談判していた。

「あれから射撃も練習しました。
 ジョーの分まで働きます」
「しかし奴等は…」

「だからです。
 インターポールのクセに
 弾が怖くて逃げてたなんて
 思われたくないですからね」
「リュウ…」
「良いじゃないですか、団長」
進言したのは松田だった。

「リュウの腕前を拝見しましょうよ。
 その方がジョーも喜ぶでしょうし」

「…頼んだぞ、リュウ」
「はいっ!!」
満足そうな顔で桐生は笑顔を浮かべた。
あの頃と全く変わらない笑顔。
一瞬時が戻ったようだった。

「ジョーが痛めつけられた分は
 しっかり返して貰わないとな」
「姫の心の傷の分もな」
「確かに。貸しはデカいぜ!」
源田の喝が全員の心に刻み込まれる。

「…行くぞ」
「はいっ!!」
大門の号令に
軍団員は一斉に答えた。

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SITE UP・2005.04.23 ©森本 樹

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