| [53] 別れ・出向 |
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「出向…ですか?」 開口一番、谷が言った。 「そうだ。谷ヤンは兵庫県警。 ゲンは埼玉県警にな」 「大門軍団は…」 源田の言葉に大門は静かに頷いた。 「お前は何時までも軍団の一員だよ、ゲン。 谷さんもな…」 「寂しくなるなぁ…」 眼鏡を傾け、目頭を押さえる平尾。 永遠の別れじゃない。 だが…寂しさは変わらない。 「また…会えるよね?」 咲樹の呟きに、 源田は笑顔で彼女を抱き上げた。 「きゃあ!!」 「嫌だって言っても会いに来るぜ」 「そう言うこった」 谷も笑っている。 そうだ。 これは祝うべき事。 胸を張って送り出せば良い。 仲間の門出を。 「盛大に送別会やりましょう!」 「CORNER LOUNGEが良いな、俺」 「予約入れるか。おい一兵…」 「あ〜、ヒナさんには俺から話しておこう。 今日は俺の奢りだ。 遠慮なくやってくれ」 「課長! ごっつぁんです!!」 刑事部屋に明るい笑い声が木霊した。 CORNER LOUNGEは非常に明るかった。 呑めや歌えのドンちゃん騒ぎで、 途中参加の明子も一緒になって大ハシャギだ。 こうなると祭りである。 それで良い。 苦楽を共に歩んできた仲間同士。 これで良いのだ。 飾った言葉など不要。 酌み交わす酒が、 男達の言葉となる。 「良いなぁ…男同士って」 咲樹が小声で明子に告げた。 「そう? むさ苦しくない?」 「だから、花が必要なの!」 酔った平尾が二人に近付こうとするが 強引に北条と鳩村が引き離した。 こういう時だけコンビネーションが良い。 「はは、妬くな妬くな!」 源田は寂しさを隠すように爆笑し、 谷もまた酒を注ぎながら微笑む。 「大さん…。 色々、有り難う御座いました」 「止して下さい、谷さん。 自分は、谷さんから色んな事を 学ばせてもらったんですから」 「刑事の処世術、とか」 「そうそう」 「後世に伝えてもらいましょうかね」 「解りました…」 「しみったれた事は無し! 皆、ジャンジャン行ってくれ!!」 木暮の号令に 祭りは更にヒートアップしていた。 夜遅くまで、 彼等の送別会は続いた。 「行っちゃったね…」 数日後。 源田の馴染みだったロッカーから 『体でぶつかれ! 反骨精神』の 似顔絵ポスターが消えていた。 赴任先でもきっと あのポスターが貼られる事だろう。 谷は暫く離れていた愛娘と 再び親子水入らずの生活が送れるはずだ。 だがあの父親の事、 職を終える迄は現役で 現場を駆け巡っているに違いない。 「何処に行っても二人は変わらないだろうね」 北条の言葉に、咲樹は大きく頷いた。 「それで良いのよ、きっと。 変わらないのも、良い事が有るのよ」 「…かもな!」 空は綺麗な雲一つ無い晴天だった。 二人の門出を祝うかのように。 |