| [54] 沖田 五郎 |
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その男は風の様に現われた。 「今日から此方でお世話になります」 難事件をさっさと解決し、 あどけない顔で笑っている。 「不思議な人…」 咲樹のこの言葉に 北条と鳩村は同時に反応した。 『これは厄介なライバルが現われた』 只でさえ互いにライバル意識を持つ二人にとって 沖田の存在は危険極まりない。 新しく赴任してきた浜 源太郎と にこやかに話を弾ませる咲樹の知らない所で 男達の戦いは静かに始まっていた。 「で、咲樹ちゃんがオキさんに惚れてるか聞くの?」 行動を起こしたのは鳩村の方だった。 平尾を呼びつけ、 無理難題を持ちかけたのだ。 「自分で聞けば良いじゃない」 「聞けないからこうして頼んでるんだろ?」 「人に頼む態度、それ?」 「…女、紹介する」 「本当?」 「あぁ」 「じゃあ聞いてくるよ」 「頼んだぜ」 ルンルンとスキップを踏む平尾の背中を見送り 鳩村は溜息を吐いた。 「…単純」 全く以ってその通りだった。 「咲〜樹ちゃん!」 「どうしたの、一兵?」 咲樹は丁度一人で 珈琲を飲んでいるところだった。 周りには誰も居ない。 「ナンパ?」 悪戯っぽく笑う咲樹に 平尾は慌てて否定する。 「違うよ。 咲樹ちゃんさぁ〜 あの沖田刑事の事、どう思う?」 「どうって?」 「例えば… 『キャア、素敵!』とか 『格好良い!!』とか…」 「出来るタイプの人よね」 「はぁ〜?」 「だから仕事にソツの無いタイプ。 一兵も見習ったら?」 「それだけ?」 「そうよ。だって良く知らないもん」 「もっと知りたいと思う?」 「自然に判るでしょ。 手腕なんかは」 どうやら咲樹は沖田の事を 『男』として見ていないらしい。 あくまでも『刑事』としてなのだ。 「根っからの刑事ね、咲樹ちゃん…」 「どうも。あ、一兵」 「何?」 「団長が呼んでたわよ。 何かヘマしたんでしょ?」 自分に対し人懐っこい笑みを浮かべる咲樹。 これは慣れから来るものである事は 平尾自身よく解っている。 「はいはい、行って来ますよ」 口を尖らせながらも 平尾の目は笑っていた。 安心したのだ。 「変な一兵…」 咲樹の独り言は当然 平尾の耳に入っていなかった。 「何だよ、アイツ?」 北条はどうも沖田の存在が気に入らない。 何故かは解らないが エリートと云う言葉には 抵抗を感じている。 「女って『エリート』好きだからな…」 それが気に入らないのかどうか。 とにかく北条は沖田の動向を探る事にした。 |