| Glad Eye Act.2 |
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女は今日もカウンターで 一人カクテルを嗜んでいた。 今日は来るだろうか。 あの人懐っこい紳士は。 「よう」 背後から声をかけられ、 女は嬉しそうに微笑んだ。 待ちかねていた。 その声を。 声の主を。 「待たせたな」 「いいえ、平気よ。 待つのには慣れてるの」 「こんな良い女を待たせるなんて、 その男は随分と罪深い生き物だな」 「あら、罪なんて簡単に使う言葉じゃなくてよ」 女は微笑みながらマスターに注文する。 「グラッド・アイをこの人にも」 「はい」 「この間もそれだったな」 「よく覚えてるのね」 「まぁな」 鳩村は慣れた感じで隣に腰掛ける。 「随分と女性をリードするのがお上手な事」 「Ladyに褒められるとは至極光栄」 少しおどけて返した仕草だったが 彼女には高評だったらしい。 「貴方って不思議な人ね。 とてもハンサムなのに、 とってもチャーミング」 「君の魅力には敵わないさ」 「あら、そうかしら?」 「勿論。こんなにカクテルの進みも良い」 鳩村は上機嫌でカクテルを咽喉に流し込む。 こんなに心が躍るのは久しぶりだ。 とても心地良い状態で自分を受け容れる 目の前の女性の事がもう少し知りたくなる。 『しかし、俺から聞いたんじゃ まるで職務質問か尋問になりそうだし…』 プライベートを楽しんでいるのだから 仕事を意識させる様な言動は避けたい。 至極、当然の事である。 「この出会いの記念に…」 彼女はそう言うと スッと何かを差し出してきた。 小さな1枚のカード。 名刺…にしては随分と洒落たカードだ。 Barbara 「バーバラ…」 「私の名前」 バーバラはそう言って微笑んだ。 思わぬ助け舟である。 「俺は…英次」 「エイジ、ね。覚えたわ」 バーバラ。 彼女の名前を知っただけで どうしてこんなにも高揚するのか。 此処最近仕事、仕事で 仕事にかまけていたからか。 スッカリ忘れていた。 この高揚感を。 「ねぇ、エイジ」 「ん?」 「明日も此処で会えるかしら? それとも、忙しい?」 「会いに来るよ、どんな事が遭ってもね」 「大丈夫なの?」 「あぁ、心配は要らない。 君の為なら、必ずだ」 鳩村はそう言うと そっと自分の右手の小指を差し出した。 「日本では大切な約束を交わす時に 『指切り』をするんだ」 「ユビキリ…?」 「こう、さ」 鳩村に導かれる様に 小指を差し出したバーバラは 不思議な儀式に興味深々だった。 「エイジ、約束して。 素敵な夜を過ごしましょう、2人で」 「勿論だよ、バーバラ。 他ならぬ君の頼みなら…」 不思議な位に惹かれていた。 目の前の女に。 目の前の男に。 |