Perfect Crime・4

「ジョーッ!!」
大門の叫びに、微かだが北条の口が動いた。

「……」
「何だ? どうした。ジョー?」
「…寒い……」

異常な低体温。
恐らくは凍傷にやられたのだろう。
急がなければ命に関わる。

「リキ、救急車!」
「はい!!」

北条はうわ言の様に「寒い」と繰り返した。
嫌な過去が蘇る。
同じように「寒い」と言って死んだ男の姿が…。

「タツ…」

死なせはしない。
もう、あんな思いは…したくない。

「寒い…団長…寒い……」
「大丈夫だ、ジョー。
 もう大丈夫、寒くないぞ…」
震える体を優しく擦りながら
大門は懸命に北条を介護していた。

* * * * * *

北条は警察病院に緊急入院した。
凍傷の状態がかなり酷い。
焼けた肌。
動かない、包帯を巻かれた手足。

「…こんな状況ですから
 当然、当分の間は絶対安静です」
医者はそう忠告すると
静かに部屋を出て行った。

軍団の誰もが静かに北条を見守る。

酷い状態だった。

点滴を打たれ、静かに眠る北条の穏やかな顔を
大門は黙って見つめていた。

「あんな中に半袖で2日もだ。
 全く、クレイジーだぜ」
「誰がジョーをこんな目に…」
鳩村と源田は腹の虫が納まらない。

すると。

トントン

誰かがノックして入ってくる。

「大門軍団の面々が揃っているとはな」
「失礼だな、おっさん」
松田が噛み付くのを大門は制した。

「失礼ですが、貴方は?」
「東部署の多田野だ」
「多田野…さん」

多田野は警察手帳を見せた。

「北条は眠っているのか?」
「おい、一体何の…」
源田が食って掛かろうとするのを
今度は平尾が懸命に抑える。

「コイツには殺人容疑が掛かっている」
「京浜埠頭の殺しの件、ですか?」
「あぁ。直ぐにでも取調べをしなければならない」

「ざけんなよ、おっさん。
 ジョーの奴は動ける状態じゃねぇんだ」
「どうせ、我々の眼を誤魔化す為に
 『自作自演』したんだろう」
「何だと…?」
温和に話を聞く筈だった谷でさえ、
この発言には激怒した。

「とにかく、意識を取り戻したら
 取調べを行う。
 コイツの身柄は我が東部署にある。
 西部署は口を挟まないで貰おう」

「出て行けっ!!」
松田が吠えた。
鳩村も、源田も
大門の命令一つで掴み掛かる構えだ。

「失礼する」
言いたい事を言い終わったのか、
多田野は部屋を後にした。

「大さん!」
堪らず谷が訴える。

「良いんですか、あんな言い草をされて。
 自作自演なんて馬鹿げてる。
 そんな事、ジョーがする筈無い!!」
「そうですよ。
 おやっさんの言う通り!
 命賭けて迄どうしてそんな事…」
「団長、何とか言って下さい」
「団長!」

「……」
大門は険しい表情を浮かべた。

「団長?」
松田がそれに気付く。

「ジョーには、アリバイが無い。
 そして証拠が揃っている。
 …今のままでは、覆せない」
「団長…」
団員達は皆、項垂れてしまった。

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SITE UP・2006.1.31 ©森本 樹

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