少年の涙・5

「大変だよ、大門君!!」

血相を変えた二宮が
刑事部屋に駆け込んで来た。

「どうしました、係長?」
「どうしたもこうしたも、嗚呼!
 とにかく、大変なんだよ!」
「…事情が何やら切迫しているようですが」

浜の言葉に二宮は激しく頭を降る。

「そうなんだよ、浜君!
 あの『秋田組』の組長が
 そろそろ『危ない』らしいんだ」
「秋田組?
 指定暴力団の?」
「そうなんだよ、大門君」

「秋田…」
大門の脳裏にあの少年の顔が浮かんだ。

「まさか…」
「どうやら、そのまさかのようだ」
「課長…」

課長室から出てきた木暮は
非常に険しい表情を浮かべていた。

「団長。
 あの少年、…薫君か。
 彼の父親を独自に調べてみたんだが…」
「課長…。
 まさか彼は……」
「父親は秋田 昇。
 現組長、秋田 惟次の長男で
 次期組長候補だった男だ」
「…やはり、そうですか」

大門も薄々は感じていた。
目元が非常に似ているのだ。

仁義に厚い男だった。
彼が組長になればきっと
秋田組は安泰だろうとまで言われていた。

そんな彼も、故人になった。
交通事故が原因で。

「…その交通事故ですが、
 どうも不審な点が有るんですよ」
浜が当時の資料を漁りながら唸る。

「不審とはどう云う事かね?」
「えぇ、係長。
 一見交通事故に見えますが…
 事故に見せかけて殺した…とも
 考えられませんかね?」

浜は鋭い視線を大門に向ける。

「秋田 惟次にはもう一人息子が居ます。
 秋田 譲二。
 兄とは似ても似つかぬ荒くれ者です。
 まぁ、昇とは異母兄弟ですが…」

大門は無言で立ち上がると
徐に無線機を取った。

「ハト、大門だ。
 現在地は?」
『鳩村です。
 現在地は……』

即座に返答される。
丁度鳩村は秋田組の管轄をパトロール中だった。

「オキと合流して
 秋田 譲二の身辺を洗うんだ」
『解りました』
「大さん……」

「今回の件は譲二が絡んでいると思います。
 狙いは薫君ではないかと…」
「跡目争いですか?
 しかし……」
「えぇ。薫君はそんな事情を知らないでしょう。
 だから母親の緑さんを拉致した。
 緑さんはその危険性を知っていたから
 薫君を一兵に守らせようと……」
「そうやって今までも守ってきたんですな」

浜には良く解るのだろう。
子を守る親の執念。

「薫君は…?」
「今はアコが見ています。
 しかし、秋田組が動くとなると
 流石に……」
「ではワシがアコちゃんと薫君を」
「お願いします」

大門が深々と頭を垂れると
浜は途端に慌てだした。

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SITE UP・2006.9.30 ©森本 樹

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